■概念・定義
口唇・口腔、眼、鼻、外陰などにびらん(ただれ)が生じ、全身に紅斑、びらんが多発する疾患群である。発熱、全身倦怠感などの全身症状も伴う。代表的なものとして中毒性表皮壊死症(TEN)、スティーブンス・ジョンソン症候群(SJS)、薬剤性過敏症症候群(DIHS)などがこれに含まれる。
■疫学
人口100万人当たり年間1〜10人程度発症すると推定され、発症年齢は小児から高齢者まで幅広い年齢層にみられる。
■病因・発症機序
正確な病因・発症機序は不明であるが、薬剤もしくは感染症などが誘因となり免疫変調をきたし、皮膚・粘膜に重篤な組織障害が生じると推定されている。薬剤では消炎鎮痛薬、抗菌薬、抗けいれん薬などが、感染症ではマイコプラズマ、ヘルペス属ウイルスなどが誘因となる。病理組織学的にGVH(graft-versus-host)型組織反応を示し、表皮の壊死性障害がみられることが多い。
■症状
高熱、全身倦怠感、咽頭痛などとともに以下のような皮膚粘膜病変を呈する。しばしば肝機能障害などの多臓器障害を合併する。
(1) 皮膚病変:円形または不整形の大小さまざまな滲出性紅斑、水疱を有する紅斑〜紫紅色斑が全身に散在多発する。紅斑は融合・拡大し、ときに表皮剥離をきたす。
(2) 粘膜病変:口唇・口腔粘膜、鼻粘膜では発赤、水疱が形成され、容易に破れてびらん、血性痂皮になる。眼病変としては眼球結膜の充血、眼脂、偽膜形成が認められ、角膜瘢痕形成による重篤な視力障害、瞼球癒着、ドライアイなどの後遺症を残しやすい。外陰部、尿道、肛門周囲にはびらんが生じて出血を認め、癒着を残すことがある。ときに上気道粘膜や消化管粘膜を侵し、呼吸器、消化器症状を併発する。
■分類
本疾患群は症状・所見およびその経過より以下のように分類されるが、発症早期には鑑別が困難なことも多い。(1)中毒性表皮壊死症(TEN;表皮の壊死性剥離性病変が体表面積の10%以上)様の症状を呈するもの、(2)スティーブンス・ジョンソン症候群(SJS;表皮の壊死性剥離性病変が体表面積の10%未満)様の症状を呈するもの、(3)その他:薬剤性過敏症症候群drug-induced hypersensitivity syndrome(DIHS)、急性汎発性発疹性膿疱症(AGEP)などを含む。
■検査所見
多くの症例で白血球増多または減少、CRP高値、肝機能障害を認め、さらに間質性肺炎、腎機能障害、消化管のびらん・潰瘍形成、造血器障害、DICによる検査値異常を生じることがある。皮膚病理組織検査では、表皮向性の炎症性細胞浸潤を伴う表皮基底層または表皮全層に及ぶ好酸性壊死を認めることが多い。細隙灯顕微鏡検査にて眼表面上皮(角膜、結膜)のびらんをしばしば認める。
■治療
急性期から適切な医学的管理を開始し、重症化を防ぐ。ステロイドの全身投与が第一選択となるが、病態を考慮した治療も必要なことがある。特に、重篤な後遺症を残しやすい眼病変の管理を適切に行うことが重要である。
■予後
急性期の適切な治療により回復することが多いが、その予後は疾患分類により大きく異なるものの、発症早期には鑑別が困難なこと、加えて細菌やウイルスなどの二次感染や呼吸器障害、消化管出血、多臓器不全などにより死亡する場合もあるため、総合的な医学管理が求められる。急性期における適切な早期診断と治療指針の確立が求められている。しばしば角膜瘢痕形成による重篤な視力障害、瞼球癒着、ドライアイなどの後遺症を残し、患者のQOLに大きな影響を与える。
難治性皮膚疾患の画期的治療法に関する研究班から
重症多形滲出性紅斑(急性期) 研究成果(pdf 22KB)
この疾患に関する調査研究の進捗状況につき、主任研究者よりご回答いただいたものを掲載いたします。
情報提供者
研究班名 重症多形滲出性紅斑に関する調査研究班
情報見直し日 平成20年4月25日
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