難病(特定疾患)と生活保護・社会保障を考える【携帯/モバイル版】

この場を借りて、難病(特定疾患)と生活保護などの社会保障制度について考えてみたいと思います。

特発性血小板減少性紫斑病/診断・治療診断(公費負担)

特定疾患情報認定基準

■概念
本疾患は血小板膜蛋白に対する自己抗体の発現により主に脾における血小板の破壊が亢進し、血小板減少をきたす自己免疫性疾患である。種々の出血症状を呈する。通常、赤血球、白血球系に異常を認めず、骨髄での巨核球産生の低下もみられない。自己抗体の発現機序は明らかでなく、血小板減少をもたらす基礎疾患がなく、薬剤の関与がないことから特発性と呼ばれている。

■疫学
昭和57年に特発性造血障害調査研究班で登録を開始して以来、毎年130〜210名程度の症例が登録され、平成7年3月の時点で合計2,798名の患者登録がなされている。その内訳は、男性920名、女性1,878名で、その比は約1:2である。本疾患の100万対発生率は11.6である。特定疾患医療受給者証交付件数は平成17年度末で推計20,823件(男6,359例、女14,464例)である。

■病因
病因は不明であり、抗体産生機序は明らかにされていない。

■症状
本疾患は、急性型と慢性型に分けられる。急性型は小児に多く、ウイルス感染が多くの場合先行し、急激に発症し数週から数カ月の経過をとる。慢性型は徐々に発症し、推定発病から6ヶ月以上、年余にわたって経過する。後者は、成人女性が男性に比し2.5倍多く、発症は男女とも51〜80歳の中高年に大きなピークが認められ、さらに女性では26〜45歳にもピークがある。臨床症状は出血症状であり、主として皮下出血(点状出血又は紫斑) を認める。歯肉出血、鼻出血、下血、血尿、頭蓋内出血なども起こり得る。出血症状に気づかず血液検査で、偶然に血小板減少を指摘されることもある。

■治療
昭和63年度に本研究班で作成された治療指針に従って治療がなされている。副腎皮質ステロイドが第1選択薬であり、通常プレドニン1mg/kgを1ヶ月投与し、血小板数の正常化に囚われる事なく、出血症状を見ながら減量し必要であれば維持量(10mg/day以下)を継続する。副腎皮質ステロイドが無効あるいは副作用が強く投与継続が困難でかつ出血症状が強い場合は摘脾を行う。摘脾も無効の場合は、アザチオプリンやシクロホスファミドなどの免疫抑制剤が試みられ、有効なことが少なくない。γ−グロブリン大量静注は一過性ではあるが高率に血小板数の増加が期待され、外科的手術時、分娩時、重篤な出血時など緊急に血小板増加が必要時には有用である。ヘリコバクター・ピロリ陽性例では、標準的な除菌療法を行うことにより、半数近くの症例で血小板数の増加がみられる。そのため、ヘリコバクター・ピロリ陽性例では副腎皮質ステロイド療法の前に除菌療法を試してみてもよい。

血小板数が50,000/o3以上ある場合や血小板数が30,000〜50,000/o3でも出血症状がほとんどない場合は無治療で経過を観察する。

■予後
急性型の多くは自然寛解し、慢性型に移行するのは10%程度である。慢性型は副腎皮質ステロイドで約20%が寛解する。ステロイド不応症例では摘脾が積極的に行われるが、それにより60〜70%の症例が寛解する。種々の治療に抵抗性のいわゆる難治例は約5〜20%にみられ、出血症状に対する厳重な管理が必要である。致死的な出血症状は数パーセントにみられる。


血液凝固異常症に関する調査研究班から
特発性血小板減少性紫斑病(ITP) 研究成果(pdf 25KB)
この疾患に関する調査研究の進捗状況につき、主任研究者よりご回答いただいたものを掲載いたします。

  メニューへ