■概念・定義
外陰性器、会陰部に好発する疾患であるが、躯幹、四肢にも発症する。通常潜行性であるため初発疹に気づかないことが多い。外陰部、会陰部では境界明瞭な硬化局面で、局所の激しい痒み、灼熱感を訴えることが多い。体幹部では自覚症状を欠くことが多く、角化性白色扁平な丘疹が特徴的な皮疹である。やがてこれらの丘疹は癒合して角化性白色硬化局面となる。
同義語:white‐spot disease、硬化苔癬、陰門萎縮症、陰茎萎縮症、閉塞性乾燥性亀頭炎
■症状
会陰部、腟、肛門周囲に象牙色をした萎縮性の角化性丘疹、白色硬化局面が見られる。ときに浸軟した間擦疹と類似する。毛細血管拡張、紫斑を伴うこともあり、小水疱、水疱は出血性となる。局所の痒み、疼痛、灼熱感を伴う。男性の場合、亀頭部、亀頭包皮内板に白色硬化局面が生じ、陰茎萎縮症を呈するようになる。尿道口に波及すると尿道口狭窄をきたす。躯幹に生じた場合は比較的若年者に生じる。体幹、関節屈曲面に好発する。小さい光沢のある白色扁平な毛孔一致性角化性丘疹が集族する。この場合white‐spot diseaseと称することがある。大型の境界明瞭な象牙色をした局面として見られることもある。晩期では萎縮して、軽度陥凹する。表面には縮緬状の雛が見られる。外陰部病変は時に悪性化し、有棘細胞癌の発生母地となることがあるので注意が必要である。
■疫学
女性の外陰部病変は中・老年者(40〜70歳)に好発する。その半数は外陰部に限局する。1/4は外陰部以外に、残りの1/4は外陰部とその他の部位にも病変を有する。陰部外病変を有する症例は若年者のことが多い。女性は男性に比べて約10倍の発生率である。男性では再発性亀頭包皮炎、包茎の人に発生することが多い。本病変部の性質(慢性炎症、肥厚、慢性潰瘍)から皮膚悪性腫瘍(特に有棘細胞癌)を発生することがある。
■病因
家族内発症、様々なHLAとの相関から遺伝因子、女性ホルモンの消長と本症発症との関連性から内分泌異常、SLEやGVHDとの組織類似性から免疫学的機序が推測されているが、病因は不明である。
■治療
副腎皮質ホルモンの外用あるいは局所注射が試みられているが、完治は期待できない。尿道、陰門、肛門狭窄あるいは本症を発生母地とする悪性化が考えられる場合は、外科的療法が対象となる。
■予後
閉経後の発症は慢性経過をとることが多い。陰部発症例では尿道、陰門、肛門狭窄をきたすことがある。この場合排尿痛、排便痛など日常生活に困難を生じることがある。また本症を発生母地として悪性腫瘍(特に有棘細胞癌)を生じうる。
強皮症に関する調査研究班から
研究成果(pdf 18KB)
この疾患に関する調査研究の進捗状況につき、主任研究者よりご回答いただいたものを掲載いたします。
情報提供者
研究班名 皮膚・結合組織疾患調査研究班(強皮症)
情報更新日 平成20年4月29日
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