■概念・定義
成人スティル病は、発熱、皮疹、関節炎、リンパ節腫脹、肝障害、高度の炎症所見などを主徴とする全身性炎症性疾患である。若年性関節りウマチ(JRA)の中で、発熱、皮疹などの全身症状を主徴とする病型をスティル病と呼び、これと病態が類似し、成人に発症するため成人スティル病と呼ばれる。本症から慢性関節リウマチ(RA)に移行する症例もあることから、RAの亜型とする見方もあるが詳細は不明である。
■疫学
1993年の我が国の年間受療患者数は1,300人と推計されている。男女比は1:2.3で、発症年齢は20〜50歳代が多い。
■病因
現時点では全く不明である。初発時に発熱とともに強い咽頭痛とリンパ節腫脹を伴うことが多く、ウイルスなどの環境要因が関与していることが推測されている。
■症状
(1)全身症状
発熱は必発であり、ピークは39℃以上に達することが多い。弛張熱の形を取ることが多く、数週間持続する。このほか、発熱に伴って全身倦怠感、易疲労感、食欲低下、体重減少などが起こる。
(2)皮膚症状
薄い紅色(サーモンピンク)の皮疹が発熱とともに出没するのが特徴的であり、掻痒感を伴わない。同様の皮疹は機械的な皮膚刺激でも出現する(Koebner現象)。
(3)関節症状
関節炎は一過性のこともあるが、慢性に持続することも少なくない。 発熱に一致して出現し、手、膝、PlP関節(近位指節間関節)、MP 関節(中手指節関節)などにみられやすい。慢性に経過すると、手根骨間関節の強直が生ずるほか、一部では膝・股関節の骨破壊が出現することがある。腱鞘炎も発熱に一致して出現し、腱鞘に沿って有痛性の腫脹、発赤を認める。
(4)その他
発熱に一致して強い咽頭痛を訴えることが多い。またリンパ節腫脹 は本症でよくみられ、頸部で両側性に有痛性(軽度)の腫脹を認める。 約半数例で肝・脾腫を認める。このほか頻度は高くないが、胸膜炎、心膜炎、間質性肺炎、無菌性髄膜炎などを認めることもある。極めて重症例では、播種性血管内凝固症候群(DlC)を合併することもある。
■治療
非ステロイド系消炎鎮痛剤が第1選択として用いられるが、実際にはステロイド剤の投与を必要とすることが多い。
■予後
本症の生命予後は一般に良好とされるが、難治例も存在する。特に診断が遅れた場合には、漿膜炎、肝不全、髄膜炎、DlCなどで重篤となることもある。また、単周期型のこともあるが、大部分の症例は再発と寛解を繰り返す多周期型である。慢性の関節炎に移行することもあり、 この場合には関節破壊のためにQOLが障害される。
情報提供者
研究班名 免疫疾患調査研究班(自己免疫疾患)
情報見直し日 平成19年9月5日
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