難病(特定疾患)と生活保護・社会保障を考える【携帯/モバイル版】

この場を借りて、難病(特定疾患)と生活保護などの社会保障制度について考えてみたいと思います。

膵嚢胞線維症/診断・治療指針

特定疾患情報

■概念・定義
 膵嚢胞線維症(cystic fibrosis;CF)は全身の外分泌腺機能不全に基づく疾患であり,膵と肺の病変の頻度が高い。その特徴は,(1)膵と気道の粘液分泌腺に極めて粘稠な分泌液が産生されこれを閉塞する,(2)汗中へ過剰の電解質が失われる,ことにある。更に膵における高度の線維増生と導管の嚢胞状拡張が著明で,消化吸収障害をきたす。

■疫学
 全国患者数(確診例)は平成6年度までに29人とそれほど多くはない が,診断の進歩や認識の広まりにより,今後,症例数が増えるものと思われる。ほとんどが新生児期,乳児期に発症する。

 白色人種の中では最も頻度の高い重篤な劣性遺伝病として知られてお り,約2、500の出生に1例の頻度で発症する。一方,黒人,東洋人では稀とされている。

■病因
 常染色体性劣性遺伝をし,全身の外分泌腺異常をきたす。CFの原因遺伝子(CF遺伝子)は,第7染色体長腕上J44‐D7S424間に存在し,1989年Rommensらにより単離された。その遺伝子産物は1,480個のアミノ酸残基よりなり,cystic fibrosis transmembrane conductance regulator(CFTR)と呼ばれる。CFTRはc−AMP依存性Cl‐チャンネルであり,更にc AMP依存性Na+チャンネルの機能調節も行っている。このCF遺伝子に変異が起こることにより機能が欠失し,発症する。現在までに約300種類のCF遺伝子の突然変異が検出されているが, 更に約3,000種類の変異の存在が予想されている。白人におけるCFTR変異の約70%は508番目のアミノ酸のフェニルアラニンの欠失 (△F508)によるものである。一方,日本では△F508の変異は認められず,日本のCFの遺伝子変異は欧米のそれとは異なる。

■治療
 現在のところ根本的な治療はなく,対症的治療を行う。

 呼吸器感染が生命予後を決定するため,粘稠な気管支分泌物の排除をはかり,呼吸器感染を起こした場合には適切な治療が必要である。気管支拡張剤や粘液溶解剤の投与,吸入療法,体位ドレナージ,抗生物質の投与などが行われる。

 新生児期の胎便性イレウスに対しては,高浸透圧性造影剤(ガストログラフィン)を浣腸し胎便を溶かす治療が行われるが,改善しない場合には手術が必要である。消化吸収障害,脂肪便がみられる症例では消化酵素剤の投与が必要である。乳幼児,小児期の症例が対象であり,しかも発育障害を伴うため,栄養管理が重要となる。高カロリー,高蛋白食を与え,それぞれの脂肪吸収能に応じて脂肪摂取量を調整する。また,十分量のビタミン補充を行う。

 発汗過多によるショックに対しては輸液による水分,電解質の補給が必要である。

 原因遺伝子が同定されたことや,近年の分子生物学の進歩から,本症の遺伝子治療への期待が高まっている。

■予後
 以前は平均7〜8歳で呼吸器感染症で死亡していたが,呼吸器感染症の治療法の進歩,及び病態の解明による適切な輸液,栄養管理によって著明に改善し,現在では成人に達する症例も多くなってきている。


◆ 第3回膵嚢胞線維症全国疫学調査

 「難治性膵疾患に関する調査研究班」では、わが国における膵嚢胞線維症の実態を把握し、本症の診断と治療に役立てるため「特定疾患の疫学に関する研究班」と共同で、2004年1年間ならびに過去10年間の膵嚢胞線維症患者に関する第3回全国疫学調査を実施しました。小児科を標榜する400床以上の病院、大学附属病院の小児科、50余の小児専門病院に対する1次調査により、474科(回収率80.3%)から過去1年で7名、10年で16名の報告がありました。また、これまで2回の全国疫学調査から確認された患者さんの経過調査、「びまん性肺疾患に関する研究班」でのアンケートならびに文献検索により確認された患者さんにたいして副次調査を行いました。これらの結果を加算した結果、2004年中の患者は13名、過去10年間の患者数は38名程度と推定されました。

 詳細:第3回膵嚢胞線維症全国疫学調査(中間報告)(PDF 555KB)

◆ 膵嚢胞線維症個人調査票の解析結果

 第3回膵嚢胞線維症全国疫学調査(2004年1年間ならびに過去10年間)に引き続き行われた臨床経過に関する2次調査の結果がまとまった。2次調査では過去10年間に確認された34症例中、17症例の個人調査票が回収された。日本人の膵嚢胞線維症患者の長期経過は、白人の膵嚢胞線維症(classic cystic fibrosis)と類似していた。即ち、繰り返す呼吸器感染により呼吸不全が進行し、それに伴って栄養状態が悪化し、入院治療を必要とする期間が徐々に長くなり、15〜20歳で死亡する症例が多かった。診断法ならびに治療薬には未承認のものも多く、肺感染症とそれに伴う呼吸不全の進行を遅らせるために早期の診断と治療体制の確立が必要である。

 詳細:第3回膵嚢胞線維症全国疫学調査(個人調査票の解析)(PDF 1,155KB)


難治性膵疾患に関する調査研究班から

膵嚢胞線維症 研究成果(pdf 29KB)  この疾患に関する調査研究の進捗状況につき、主任研究者よりご回答いただいたものを掲載いたします。
情報提供者
研究班名 消化器系疾患調査研究班(難治性膵疾患)
情報更新日 平成19年9月8日

メニューに戻る