■概念・定義
自己免疫性肝炎は,肝細胞障害の発症と持続に自己免疫機序が関与していると考えられる慢性に経過する肝炎であり,中年以降の女性に好発することが特徴である。原則的には既知の肝炎ウイルス,アルコール,薬物による肝障害,及び他の自己免疫疾患に基づく肝障害は除外される(*)。また,治療に際し免疫抑制剤,特にコルチコステロイドが著効を奏す。
*我が国ではC型肝炎ウイルス血症を伴う自己免疫性肝炎がある。
■疫学
我が国での年間推定患者数は1,400症例とされているが,近年症例数は増加傾向を示している。発症年齢は50歳を中心とする一峰性を示し,多くは中年以降の発症であり,最近高齢化が認められる。男女比は約1:7で圧倒的に女性に多い。
■症状
我が国では初発症状としては,倦怠感が60%と最も多く,黄疸(35 %),食思不振(27%)がこれに次ぐ。またウイルス性慢性肝炎では通常認められない関節痛,発熱を初発とするものがそれぞれ約15%にみられる。また,合併する他の自己免疫疾患による症状を初発症状とするものもある。自己免疫疾患あるいは膠原病の合併はおよそ1/3の症例でみられ,合併頻度の高いものとしては慢性甲状腺炎,関節リウマチ,シェーグレン症候群がある。身体症候としては,他のウイルス性慢性肝炎,肝硬変と異なることはない。
■検査
(1)GOT,GPTの上昇
持続性又は反復性の血清トランスアミナーゼ(GOT,GPT)の上昇がみられる。一般に,ウイルス性慢性肝炎に比し,血清トランスアミナーゼは高値で300IU/l以上の上昇を示すことが多い。ときに急性肝炎様の急峻な血清トランスアミナーゼの上昇で発症することもある。
(2)高ガンマグロブリン血症
血清γ‐グロブリン,あるいはIgG値の上昇(2g/dl以上),膠質 反応(ZTT,TTT)の高値がみられる。
(3)血沈亢進
約60%に30mm/h以上の血沈亢進がみられる。
(4)血清自己抗体陽性
我が国では多くの場合,抗核抗体が高力価陽性を示す(80倍以上)。抗核抗体とともに抗平滑筋抗体や抗DNA抗体が同時に陽性を示すことも多い。また,抗核抗体陰性で抗平滑筋抗体のみが陽性である症例や,抗肝腎ミクロゾーム抗体のみ,あるいは抗肝可溶性抗原抗体のみが陽性の症例もみられる。
難治性の肝疾患に関する調査研究班から
研究成果(pdf 26KB)
この疾患に関する調査研究の進捗状況につき、主任研究者よりご回答いただいたものを掲載いたします。
情報提供者
研究班名 消化器系疾患調査研究班(難治性の肝疾患)
情報更新日 平成20年5月13日
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