17α−水酸化酵素欠損症
■概念
本疾患は,先天性副腎過形成の成因の1つとして,1966年Biglieri により初めて報告された。ステロイド合成酵素のP450cl7の先天的な障害により,ミネラルコルチコイド過剰による高血圧と性ステロイドの欠乏による性腺機能不全をきたす遺伝性疾患である。
■疫学
症例報告数としては世界中で約120余例を認める。先天性副腎過形成の中で占める頻度は我が国で2.6%と報告されている
■病因
ステロイド合成酵素のP450cl7の先天的な障害による。常染色体性劣 性遺伝性疾患であり,原因酵素遺伝子のCYPl7は第10染色体に存在し,本症患者において種々の遺伝子変異が同定されている。
P450c17の障害により,コルチゾールの分泌低下をきたし,ACTH の過剰分泌が起こる結果,ミネラルコルチコイドのデオキシコルチコス テロン(DOC)や,コルチコステロン(B)の過剰産生をきたし,高血圧をひき起こす。また性ステロイドの低下により,男性では,男性仮性半陰陽が,女性では,原発性無月経を始めとする二次性徴の障害をきたす。
■症状
1.主症状
(1)高血圧
DOCやBの過剰産生による。若年性高血圧として発見されることが多いが,稀に認められない場合がある。
(2)性腺機能低下症
男性の典型例においては,出生前のテストステロンの欠乏のため に外陰部の女性化をきたし,腟は盲端に終わる(男性仮性半陰陽) が,P450c17の部分欠損症では中間性のあいまいな外陰部を呈することもある。一方,女性患者ではエストロゲンの欠乏のために原発 性無月経,乳房発育不全などの二次性徴の欠落をきたす。P450c17 の部分欠損症では生理を認める症例が存在する。また,男女とも,性毛(腋毛,恥毛)の欠如を認める。
2.副症状
筋カ低下
ミネラルコルチコイド過剰による低K血症に伴い,認められることがある。
■治療
高血圧に対しては,ACTHの分泌亢進を抑制し,ミネラルコルチコイドの過剰分泌を抑制する目的で,デキサメタゾン又はヒドロコルチゾンなどの合成糖質コルチコイドの投与を行う。男性患者の外陰部の女性化については社会的性の尊重を基本とし,中間性の外陰部については必要に応じて形成外科的手術を行う。
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情報提供者
研究班名 内分泌系疾患調査研究班(副腎ホルモン産生異常)
情報見直し日 平成20年4月28日
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