11β一水酸化酵素欠損症
■概念
本疾患は先天性副腎過形成の成因の1つであり,ステロイド合成酵素のP450cll(11β‐水酸化酵素)の先天的な障害により,ミネラルコルチコイドの過剰産生による高血圧と,アンドロゲンの過剰産生による男性化をきたす遺伝性疾患である。
■疫学
本症は欧米での報告は比較的多いとされ,特にイスラエルでは先天性副腎過形成の5%を占めるが,我が国での頻度はCAH全体の1%前後である。
■病因
ステロイド合成酵素のP450c11の先天的な障害による。常染色体性劣性遺伝性疾患であり,原因遺伝子のCYP11B1は第8染色体上に存在し,本症患者において種々の遺伝子変異が同定されている。P450c11の障害により11‐デオキシコルチコステロン(DOC)の過剰産生をきたし,高血圧が起こる。また副腎アンドロゲンの産生過剰により,男性では性早熟が,女性では男性化が認められる。
■症状
1.主症状
(1)高血圧
DOC過剰産生による。若年高血圧として発見されることが多いが稀に認められない場合がある。
(2)男性化(女性)
副腎アンドロゲンの過剰産生により,生下時陰核肥大,陰唇陰嚢融合など外性器男性化を認め,生後も男性型体型,乳房発育不良, 月経異常,多毛など男性化症状が進行する。
(3)性早熟(男性)
男児において性器肥大,陰毛出現などの性早熟を認める。
2.副症状
低身長(男女)
男女とも副腎アンドロゲンの過剰は早期身長発育を促すが,早期骨端線閉鎖により最終的には低身長となる。
■治療
高血圧に対しては,ACTHの分泌亢進を抑制し,DOCの過剰分泌を抑制する目的で,デキサメタゾン又はヒドロコルチゾンなどの合成糖質コルチコイドの投与を行う。女性患者の外陰部の男性化については社会的性の尊重を基本とし,中間性の外陰部については必要に応じて形成外科的手術を行う。
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情報提供者
研究班名 内分泌系疾患調査研究班(副腎ホルモン産生異常)
情報見直し日 平成20年4月28日
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