1. 特発性ステロイド性骨壊死症とは
SLEなどの膠原病や各種臓器移植後において、ステロイド剤の大量投与に関連して起こる病気です。多くは大腿骨頭に壊死が生じますが、腕のつけ根、膝などにもでることがあります。股関節が痛んだり太ももから膝にかけて痛み、歩けない、股が開けない・曲がらないなどの関節機能障害が起きます。なんらかの理由で骨内の血流が低下し、骨組織が死んで脆くなります。壊死の範囲が大きいと、体重に耐えきれずに潰れてしまいます。細菌感染は伴いませんので、いわゆる「腐った」状態ではありません。治療は長期間に及ぶことがあり、また、青壮年期に好発して労働能力を著しく低下させることも重大な問題です。患者の生活・人生の質に大きな影響を与えるため、適切な診断を行い効果的な治療へと結びつけていく必要があります。
2. この病気の患者さんはどのくらいいるのですか
特発性ステロイド性大腿骨頭壊死症の場合、日本全国における1年間の新規発生数は1000人よりやや多い程度と推定されています。
3. この病気はどのような人に多いのですか
ステロイドというお薬の大量全身投与を受けた方の一部に生じます。
4. この病気の原因はわかっているのですか
厚生労働省の調査研究班の長年にわたる研究によって、原因はかなり解明されつつありますが、まだ十分にはわかっていません。
ステロイドの大量投与後に発生した場合でも現在のところ、ステロイドによる直接の副作用とは考えられていません。ステロイド自体を悪者扱いにする必要はないことに注意が必要で、基礎疾患に対する治療の必要性に応じて、ステロイドの投与は行うべきです。
5. この病気は遺伝するのですか
遺伝しません。
6. この病気ではどのような症状がおきますか
発生しただけの時点では自覚症状はありません。自覚症状は骨の圧潰が生じたときに出現します。初期の痛みは安静によって2〜3週で軽減する傾向がありますが、圧潰の進行に伴って再び増強します。多くの場合、関節の可動域はあまり制限されません。
7. この病気にはどのような治療法がありますか
治療法は年齢、内科的合併症、職業、活動性、片側性か両側性か、壊死の大きさや位置などを考慮して決定します。
(1)保存療法
壊死の大きさや位置から予後がよいと判断できる場合や症状が発症していない場合は保存療法の適応です。免荷や安静が基本となり、体重維持、長距離歩行の制限、重量物の運搬禁止などの生活指導を行います。疼痛に対しては鎮痛消炎剤の投与で対処します。
(2)手術療法
自覚症状があり圧潰の進行が予想されるときは速やかに手術適応を決定します。若年者においては骨切り術が第一選択となりますが、壊死範囲の大きい場合や骨頭圧潰が進んだ症例、高齢者などでは人工物置換術が必要となることもあります。
8. この病気はどういう経過をたどるのですか
もともと血液循環の悪いところだけが壊死するので、その周囲の比較的血液循環のよい部分は時間が経過してもそのままです。したがって、細菌感染のように周囲に広がることはなく、ほとんどの場合、大きさに変化はありません。逆に、範囲が小さい場合は修復されて時間の経過とともに縮小することがあります。合併疾患に対するステロイドの投与を継続しても壊死の範囲は大きくならないため、必要に応じてステロイドを継続投与することは可能です。
情報提供者
研究班名 骨・関節系疾患調査研究班(特発性大腿骨頭壊死症)
情報見直し日 平成20年4月28日
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