機動戦艦ミネルバ/第四章 新型モビルスーツを奪回せよ
XI
見合わせる三人。
突然、大声を出して笑い転げる。
「何がおかしい」
「何がおかしいって……。ハイネだぜ、ハイネ」
「その筋骨隆々の身体で、ハイネはないだろう」
「俺は、シュワルチェネッガーかと思ったぜ」
「そうそう、女の子みたいな名前は似合わないわよ」
怒り出すハイネ。
「俺のオヤジが付けた名前だ。しようがないだろ」
「しかしよお……」
とまた笑い出すジャン。
再び計器が鳴り出した。
「ほら、呼び出しよ」
「わかっている」
無線機を操作すると、別のポップアップが画面が開いて、あの隊長が映し出された。
背後に複雑な計器類が並んでいるところから、モビルスーツのコクピットにいるらしい。
「おまえら、何をしている!」
「実は、例の二人組みのガキがモビルスーツに……」
ハイネが弁解する。
「あらら、隊長さん、モビルスーツを運転できるの?」
「当然だ。残しておくのももったいないので、拝借することにした」
「いつの間に……」
つい先ほどまで、ジープから機関銃を掃射していたはずである。臨機応変に行動する
実行力のある人物のようである。
「とにかく議論をしている暇はない。港まで突っ走れ! ミネルバが回収してくれる」
「了解」
新型が二台と旧式が二台。
機銃を装備している旧式が一斉掃射しながら突破口を開いていく。その後を新型が追
従する。
しかしながら、アイクとジャンの機体は、「よっこらせ」という状態で、思うように
動かせないでいた。
「もう、何やっているのよ。どんどん引き離されていくじゃない」
「しようがねえだろ。新型だから、駆動系がまるで違うんだから」
「加速装置とかないの?」
「もう、じれったいわね」
というと、手を伸ばして機器を手当たり次第に、押しまくった。
「ば、馬鹿。何をする!」
突然、椅子に押しかけられるような加速を感じる一行。
「なんだ? どうしたんだ」
「知るかよ」
サリーがスクリーンを指差しながら、
「見て、見て。これ、空を飛んでるんじゃない?」
と叫んでいる。
「う、嘘だろ?」
事実のようであった。
「こいつ、飛行タイプだったのか……」
「どこまで行くのよ」
「知るかよ。こいつに聞いてくれ」
どんどん加速して上昇していく機体。
操縦方法などまるで知らないのでなすがままだった。
地上に残された隊長たち。
呆然と見送っている。
やがて雲の彼方へと消え去ってしまう。