第八章・ミュー族との接触
Ⅰ  司令官 =ヴィルマー・ケルヒェンシュタイナー大佐  副官  =ゲーアノート・ノメンゼン中尉  通信士 =アンネリーゼ・ホフシュナイダー少尉  言語学者=アンリエット・アゼマ  銀河人の前線基地クレーフェルト。 「ミュー族の基地が騒がしくなっています。盛んに通信が交わされています」  副長のゲーアノート・ノメンゼン中尉が報告する。 「何かあったのかな?」  基地司令官ヴィルマー・ケルヒェンシュタイナー大佐が尋ねる。 「今、暗号通信を解読中です」  しばらくして解読文が上がってくる。  未知の艦隊との遭遇戦があって、ミュー族艦隊が全滅したという内容だった。 「未知の艦隊か……」 「噂に聞く『天の川人』という奴ですかね」 「そうかも知れないな」 「全滅したということは、戦力がそれだけ減少したということですよね。今がチャ ンスなのでは?」 「簡単に言うが、未知の艦隊もいるかも知れないじゃないか。今度はこっちが全滅 の憂き目にあうかも知れないぞ」 「交信を試みて、未知の艦隊と和平関係を結べれば……」 「ミュー族みたいに一切交信拒絶して、戦闘を仕掛けてくる可能性もあるぞ」 「一応、参謀達を招集して、会議に掛けてはいかがですか?」 「そうだな。招集してくれ」 「かしこまりました」  数時間後、会議室に参謀達が集められた。  集まった面々に対して、シュタイナーが発言する。 「ミュー族の通信暗号文から敵前進基地にいる艦隊が、何者かによって全滅させら れたようだ」 「だとしたら、敵基地を奪取する好機ではないでしょうか?」 「それ以前に、謎の艦隊の方を心配する方が先でしょう。味方になるか敵になる か?」 「ともかく詳細を知る必要があるな」 「念のために索敵というか交渉団を派遣してみますか?」 「そうだな。但し、ミュー族艦隊を滅ぼした謎の艦隊がいるかも知れないからな。 行動は慎重さを要求される」 「未知の艦隊と交信できれば何とかなるのでは?」 「そのためには言語とか、通信システムとかが分からないと……」 「相手に交渉する気があるならば、全周波で呼びかければ応えてくれるのではない でしょうか?」 「当たって砕けろだな」 「誰を向かわせますか?」 「俺が行く! 文官を連れて行くとしようか」  新たなる艦隊が、味方となるか敵となるか、確認する必要がある。 「言語学者のアンリエットも連れて行こう」  敵となる場合を考えれば、我らの前線基地クレーフェルトに近づけない方が得策 である。  ミュー族の基地付近で交戦となったとしても、こちらに転進してくる前に対処す る作戦を考えられる。  戦列艦ヴァッペン・フォン・ハンブルクを旗艦とする七隻からなる交渉団が出発 することとなった。 「もし我々との通信が途絶したら、相手との交渉に失敗して交戦状態になったと判 断してくれ。本国に増援要請するなり、この基地を放棄して撤退するなり、君の判 断に委ねる」  基地副司令官ジークハルト・ホルツマン中佐に、後の事を託すケルヒェンシュタ イナーだった。  数時間後、前線基地クレーフェルトを出立し、ミュー族の前線基地クラスノダー ルに向かう艦隊。 「たった七隻で大丈夫でしょうか?」  副官のノメンゼン中尉が心配する。 「ミュー族の艦隊が全滅したとしたら、基地に残る艦艇はほぼ同数だろうし、未知 の艦隊への対応で右往左往しているはずだ。ミュー族だけなら大丈夫だろう」 「ミュー族の基地が、既に未知の艦隊に落とされていたら?」 「手強いミュー族を全滅させた相手だ。戦うのは無理筋だな」 「交渉次第ということですか……」 「まあな」
     
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