第二十二章 要塞潜入!
V  要塞内、中央コントロール。 「誰が、軍港を開放した!」 「判りません。勝手に開いてしまいました」 「そんな馬鹿なことがあってたまるか」 「敵艦隊が軍港に侵入してきます」 「駐留艦隊に迎撃させろ!」 「だめです。駐留艦隊は、休息待機でほとんどの兵士が降りています。動かせませ ん」  スクリーン上には、軍港に接舷した強襲艦から怒涛のように白兵の戦士達が飛び出 してくる映像が映し出されていた。 「要塞内の警備隊に侵入する奴らを撃退させろ」 「そ、それが外部との連絡が取れません!」 「なんだと?」 「軍港に通ずる遮蔽壁も作動しません」 「システムが……システムが乗っ取られています」 「乗っ取りだと?」 「おそらく中央制御コンピューターに何者かが侵入して操作しているものと思われま す」 「何てことだ! さてはあの時に侵入したのか!」  第二弾の次元誘導ミサイルが隔壁を破砕した時のことを思い出したのだ。 「あの不発弾の中に潜んでいたのか……」  地団太踏んでくやしがる司令官。 「こうなったら要塞を自爆させる」 「無駄ですよ。システムが乗っ取られているんですから」 「やってみなけりゃ、判らないだろう」  胸ポケットから鍵を取り出す司令官。  それを自爆用のシステム起動装置に差し込んで、自爆コードを入力する。 「どうだ?」  鍵をゆっくりと回すと、正面スクリーンにカウントダウンの数字が表記された。 「自爆コードが入力されました。これより60秒後に自爆します」  コンピュータの合成音が発声される。 「59・58・57……」 「み、見ろ。やってみなけりゃ判らんといっただろう」 「43・42……」  カウントダウンが続いている。  息を呑んでそれを見守るオペレーター達。  誰も動かなかった。  所詮60秒では逃げ出せないと判っているからである。 「10・9・8・7・6・5・4・3・2・1」  大半のオペレーターが目を瞑った。  しかし、何も起きなかった。  爆発どころか、コンピューターも静かになっている。 「どうしたというんだ……」  ほっと胸を撫で下ろすオペレーター。  遮蔽壁が開いて、白兵の戦士達がどっとなだれ込んできたのはその直後だった。 「全員、手を挙げろ!」 「席を離れて壁際に並ぶんだ」  銃を構えられ、仕方なく手を挙げ席を離れて、壁際に移動するオペレーター達。  やがてゆっくりとゴードンが入室してくる。 「要塞は、すでに我々の手に堕ちた。あきらめたまえ」  肩をがっくりと落とす司令官。  タルシエン要塞陥落の報が、全世界に流されたのは、それから二時間後だった。 第二十二章 了
     ⇒第二十三章
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