第十九章 シャイニング基地攻防戦
I
シャイニング基地に接近する連邦艦隊。
第十七艦隊とシャイニング基地住民の撤収が完了して五時間余りが過ぎ去っていた。
そんな状況を知らずか慎重に艦艇を進めている連邦艦隊。
総勢三個艦隊を率いるのは、タルシエン方面軍司令長官ハズボンド・E・キンケル
大将である。
一向に進まない共和国同盟への進駐に業を煮やしついに長官自らが腰を挙げ、シャ
イニング基地攻略の陣頭指揮に出陣したのである。
「どうだ」
「索敵に出した先行艦によれば、艦船はおろか哨戒機すらも見当たらないとの報告で
す」
「こちらの艦隊数に恐れをなして撤退したか」
「数では三対一ですからね」
「さすがに逃げ足だけは速い奴等だ」
「奇襲攻撃が専門の連中ですからね。正面決戦となれば数に劣る彼らが勝てる見込み
はないでしょう」
「どこかに潜んで隙をうかがっているかもしれない。哨戒行動を怠るなよ」
「かしこまりました」
「しかし、惑星からの攻撃がないな」
「そうですね。地上には五個艦隊を持ってしても、攻略不可能とさえ噂されている防
空システムがあります。対軌道迎撃ミサイルくらい飛んできてもよさそうですが。と
っくに射程内に入っているはずです」
「全軍撤退の際の誤射を防ぐために、迎撃システムを遮断していたのかも知れない。
部隊を降下させる前に、無人の艦艇を降ろして確認してみろ」
「早速手配します」
数隻の戦艦から、無人の探査機が降ろされていく。
「どうだ?」
スクリーンに映る探査機の様子を伺いながらオペレーターに尋ねる副官。
「何の反応もありませんねえ。迎撃システムからの探査レーダーなどの電波も感知で
きません」
「つまり迎撃システムは停止していると見るべきだろうな」
「おそらく……」
「よし、引き続き探査を続けろ」
「了解!」
向き直って司令官に伝達する副官。
「お聞きのように、基地の防衛システムは停止しているようです」
「うむ。ごくろう……揚陸部隊を降下させろ。安全が確認され次第、我々本隊も着陸
するとしよう」
「はっ。揚陸部隊を降下させます」
揚陸部隊に降下命令を下す副官。
艦隊から揚陸部隊が降下体勢に入った。
「しかしなんでしょうねえ。こんなにもあっさりと基地を放棄してしまうなんて、さ
すがランドールというか、考え方には理解しがたいところがあります。確かランドー
ルはニールセン中将から睨まれて無理難題を押し付けられていると聞き及んでいます。
ニールセンの命令に逆らっての判断だと思いますが、これでは自らニールセンに良い
口実を与えるだけだと思うのですが」
「そうだな。この撤退は奴の独断だろう。ニールセン、いや軍部の誰だってこの要衝
のこの基地を手放すはずがない」
「いわゆる敵前逃亡ですね。これは重罪ですよ、銃殺されても文句は言えない」
「ランドールは何を考えているか計り知れませんからね。何か企んでいるかもしれま
せん」
「あり得るな。慎重に慎重を期していこう」