第十四章 査問委員会
I
新生第十七艦隊の幕僚の内定が関係者各位に通達された。
艦隊司令官 =アレックス・ランドール准将
艦隊副司令官 =オーギュスト・チェスター大佐(三万隻)
艦隊参謀長 =空位とする
艦政本部長 =ルーミス・コール大佐
第一分艦隊司令官=ゴードン・オニール大佐(一万五千隻)
第二分艦隊司令官=ガデラ・カインズ首席中佐(一万五千隻)
旗艦艦隊司令官 =ディープス・ロイド中佐(一万隻)
首席参謀 =マーシャル・クリンプトン中佐
第一作戦課長 =テッド・ウォーレン中佐
以上が役付きの主要な参謀達であったが、以下ずらりと参謀が並んでいる中には、
情報参謀のレイチェル・ウィング少佐と、航空参謀のジェシカ・フランドル少佐の名
前もあった。艦政本部長のコール大佐及び首席参謀のクリンプトン中佐は、旧第十七
艦隊から引き続き留任することになったものである。また旧第十七艦隊よりの二万隻
は等分されて、ゴードン・カインズ・ロイドの配下に分配された。これらの二万隻に
搭乗する将兵に関して、指揮統制上の問題が懸念されたが、共にトライトン少将の配
下であったことと、アレックスの名声と期待感によって、すんなりと水に馴染んでし
まったようである。
艦隊参謀長を当分の間空位とするアレックスの決定に、参謀達からは疑問の声も上
げる者と、当然の処置と賛同する者とに、意見が分かれていた。参謀長となれば大佐
クラスから先任されるのが通常であるが、副司令官のチェスターを除いて、その資格
のあるのはゴードンかコール大佐であるが、コールは政務担当専門の文官で参謀長に
は不向きだし、ゴードンとて作戦を練るよりも最前線で活躍する実戦派だ。
大佐より下位のクラスから選出するという案も出たが、最有力候補の首席参謀のク
リンプトン中佐は、名前が取り立たされた時に、
「連邦を震撼させるサラマンダー艦隊の参謀長という大役を引き受けるには、まだま
だ未熟すぎますし、新参者が就く役どころでもないでしょう」
と経験不足を理由に辞退を表明していた。
またアレックスを情報面から支援した情報参謀のレイチェルも、アレックス自らが
候補から外していた。情報参謀として、作戦プラン作成に重要な情報収集の任に専念
してもらいからだと言った。
そもそも独立遊撃艦隊として発足したランドール艦隊が、正規の艦隊として承認さ
れるまでに至ったその功績のほとんどは、司令官のアレックス自身が捻出したか、作
戦会議による合議であった。個人として作戦案を発表した例もあるが、アレックスが
考え出していた作戦に肉付けするだけだったり、その作戦の概要をアレックスが指示
していたりしたケースが多かった。実際問題として作戦プランのほとんどには、アレ
ックスが多かれ少なかれ手を入れていたのである。
艦隊の運命を左右する重要な作戦を、独自に考え出せるポストにふさわしい人物と
して、候補名を挙げられる物はいなかった。
艦隊参謀長を空位とすることには賛同するしかなかったのである。