第十一章・スハルト星系遭遇会戦
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それから数日後。
アレックスの前にレイチェルが意見具申に訪れていた。
「ところで司令」
「なんだ」
「部隊の女性士官の制服なのですが、やぼったいという意見が非常に多く、デザイン
変更の要望書が数多く提出されております」
「ま、またかよ……ここの部隊は女性上位もいいところだな。それで……今度は何だ
よ」
「はい。独立遊撃部隊を名乗っている以上、それにふさわしい制服が欲しいという声
が上がっています」
「早い話しが新しい制服をくれということだな」
「はい。軍規などをつぶさに調べてみましたが、士官の制服のデザインについて、明
確に規定された銘文はございません。現在着用されております制服においては、国防
省内務通達規定によって約五十年前に採用されたものです」
「ま、指揮統制をはたし、機能性のあるものなら、何だっていいわけだよな」
「その通りです」
「ま、いいか。どうせ、我が部隊は同盟軍のはぐれ者だ。自由の証である五色の旗印
の下、好き勝手やらせてもらっても構わんだろう。軍規に抵触しない限りね」
「その通りです。司令」
「で、手回しの良い君のことだ。制服のデザインとかは、すでにいくつか候補を持っ
ているのだろう」
「はい。先程、司令もおっしゃられておりましたが、『自由の証である五色の旗印』
であります旗艦・準旗艦のシンボル、火・水・木・風・土の各精霊達。赤・青・緑・
白・茶などの彩色を取り入れる意見が候補にあがっております」
「とにかく、そういうことは。当事者である女性士官達の選択に任せよう。君が責任
を持って対処したまえ」
「はい。では、そのように致します」
「一言いわせて頂けるならば……」
「何でしょうか」
「司令官としてではなく、一人の男性の希望として……できれば、ミニのタイトス
カートにして欲しいな」
「考慮しましょう」
「うむ。よろしく頼む」
それから程なくして、制服制定委員会が発足した。
レイチェルが委員長となり、パトリシアとジェシカが副委員長として補佐する。
他のメンバーには、ウィンディーネからシェリー・バウマン少尉、ドリアードから
パティー・クレイダー少尉、シルフィーネからバネッサ・コールドマン少尉、ノーム
からサラ・ジオベッティ少尉。そして衣糧課の人々。
もちろんデザイナーであるアイシャ・ウィットマン少尉も参加している。
「というわけで、司令の希望であるミニのタイトスカートという案は、第一優先で
す」
「本当に司令がおっしゃられたのですか?」
パトリシアが怪訝そうな表情でたずねた。
「そうですよ」
「ううん……」
「まあ、そう怪訝な顔はよしなさいな。我が艦隊にあって、自由な風潮が守られてい
るのも、司令の意向によるところがあるのだから。少しは希望を適えてあげないと
ね」
「そうは言っても……」
サラマンダー 赤
ウィンディーネ 青
ドリアード 緑
シルフィーネ 白
ノーム 茶
「……と以上のごとく旗艦の旗印を象徴する五色を基調としたデザインにすることに、
皆の意見が一致しました」
「色を区別して制服を制定するのはいいですが、その着用区分をどうなされるのでし
ょう。階級別ですか?」
「部隊の所属別はどうかしら。旗艦部隊は赤で、第一分艦隊は青という具合に」
「いいえ。制服は全員を統一したほうがいいわ。階級別とか部隊別に色を分けるのは
賛成できない。赤が嫌いな人、茶色が嫌いな人、それぞれいますし、服が違えば対抗
意識が芽生える素地となってしまいます。全員が納得できるように、一つの制服とし
てこの五色をバランス良く配置させるようにするのよ」
「五色も使うとなると、ちょっとカラフル過ぎるのではないでしょうか?」
「それを上手にデザインするのがあたし達の役目よ」
「わかりました。大尉のおっしゃるとおりにします」
「そうですね」
第十一章 了