第十章 反乱
I
銀河帝国首都星アルデランに近づく巡洋戦艦インヴィンシブル。
近づいてくるのは、TV放送局の船である。
皇太子殿下の坐乗する艦が、宇宙から皇族専用宇宙港に舞い降りるシーンを撮影
し演出する気概があるのだろう。
事前に連絡を取って、撮影許可を取っている。
『ご覧ください。皇太子殿下のお乗りになられていますインヴィンシブルでござい
ます。既報の通りに、共和国同盟を解放し凱旋なされました』
別の放送局も続く。
『ジュリエッタ皇女様のインヴィンシブル、マーガレット皇女様のアークロイヤル、
そして皇太子殿下の旗艦サラマンダーが仲良く並んでおります』
『あ、只今。アルデラーンに着御なされたアレクサンダー殿下が乗降口にお出まし
になられました』
そんな皇太子ご帰還の模様を放送するTVを、苦虫を?み潰したような表情で見
つめる複数の目があった。
どこかの貴族の館の一室で交わされる内輪の会話。
「たかが臨時の宇宙艦隊司令長官じゃないか。皇太子になったわけじゃない」
「ジョージ親王は、すでに皇太子として決まっていたのに」
「正式に認められたわけではない。今のうちに何とかしなければ」
どうやらロベスピエール公爵につく摂政派と呼ばれる者達のようだ。
皇室議会が開かれた。
もちろん議題は、皇太子の継承問題である。
議会としては、アレクサンダー王子が皇太子ということは決定事項である。
*参照 第七章 反抗作戦始動 XⅢ
だが、摂政派の貴族を承諾させるまでには至っていない。
「エリザベス様が、公爵殿を説得なされたのだが、首を縦に振られなかったそうだ」
「公爵殿さえ納得して頂ければ、他の貴族も従って頂けるのだが……」
「ともかく、国民の側に立てば圧倒的にアレクサンダー王子だ」
「そうだな、共和国同盟を解放させたことで、軍事的才能も証明された。もしジ
ョージ親王を強引に立てたとすれば、国民暴動すら起きかねない」
「我が領土を侵略しようと虎視眈々と陰謀を巡らしている、バーナード星系連邦が
ある限り、ジョージ親王では容易く侵略されかねない」
議員の中には、ロベスピエールの息の掛かった摂政派もいるのであるが、事ここ
に至っては自派の論を押し通すことは無理筋だろう。
「これ以上、議論の余地はないと思うがいかがかな?」
「そうだね。決を採ろうじゃないか」
こうして、アレクサンダー王子の皇太子即位の儀式の日取りが決定した。