冗談ドラゴンクエスト
冒険の書・9

メニューへ 猫だらけの村  身づくろいを終えたリリアと共に次の目的地へと出発する一行だった。 「誰かに挨拶する必要はなかったの?」 「あったとしても、この姿じゃ……」 「それもそうね」  突然、はぐれメタルが現れた。 「やっかいなのが出たわね」 「戦うまでです」  コンラッドは剣で切りかかったが、ダメージを与えられない。 「しようがないわね」  ナタリーが呪文を唱えるが、まるで利かない。  はぐれメタルは雷撃の呪文を唱えた。一行にそれぞれ80Pのダメージを与えた。 「やっぱりだめね。逃げるわよ」  しかしはぐれメタルは素早く動いて逃げられない。 「攻撃が当たらないし呪文も利かない。そして逃げるもかなわずです」 「こいつには、じっと我慢して退散してくれるのを待つしかないわ」 「もしくはまぐれ当たりを期待して攻撃を続けるか」  はぐれメタルは雷撃の呪文を唱えた。一行にそれぞれ80Pのダメージを与えた。  リリアがポシェットから何かを取り出して、はぐれメタルに投げかけた。  すると、はぐれメタルは溶けるように消滅した。  一行は10000Pの経験値を得た。  リリアのレベルが5上がった。HPが……(以下略) 「すごいじゃない。何を使ったの?」 「聖水です。メタルスライムとかに効果がありますよ」 「なるほど、これは便利だ。剣一筋の私ですが、勉強になりました」 「村から出るときは必ず持ち歩くことにしているんです。弱い魔物を寄せ付けない 効果もありますからね」  さてここで疑問に思っている方もいるかも知れないが。町や村の中には魔物が出 ないのに、一歩外にでれば魔物に出くわすのはなぜか?  この世界においては、町や村には必ず教会が存在する。神聖にして魔物を寄せ付 けない結界が教会にはある。これが魔物を近づけないわけである。  と解説している間にも、一行の旅は進んでいく。  一行の目の前に村が見えてきた。 「うううう……」  感激のあまりに涙を流しているナタリー。 「どうなされたのですか?」  首をかしげるリリア。 「勇者と関わりを持って旅立ってから冒険の書も9P目。やっと最初のクエストを 達成できそう」 「冒険の書? 何ですかそれは?」 「これまでの旅の記録を神様が記録してくれているんです。まあ、旅のアルバムと いうところでしょうか」 「そうなんだ……。良く判りませんけど、理解することにします」 「道具から貰った地図によると、間違いなくモトス村よ」 「モトス村ですか」 「クエストを請け負ってから、地べたを這いずり回ること28000マイラ。ようやく たどり着いたのよ(再び感涙)」 「おめでとうございます」  素直に祝福するリリア。 「でも荷物を届け終わるまでは安心できないわよ」 「その通りです。最後まで油断なく行動することが、クエスト達成の大原則です」  と言っているそばから、はぐれメタルが現れた。 「リリア、聖水を出して」 「それが……。さっきので最後でした」 「そんなあ……」 「でも、まだこれがありますから」  と言いながら、ポシェットから細長い針のようなものを取り出して、はぐれメタ ルに突き刺した。  毒針だ。  はぐれメタルの急所を貫いて、プシューという音とともに消え去った。  はぐれメタルを倒した。10000Pの経験値! 「いいもの持ってるじゃない。もう1本ないの?」 「この1本だけです。売り物用の花を摘む場所には、毒蜂・毒虫・毒蛇などの毒を もったものがいますから、それらを捕まえて毒を集めていたんです。血清といって 毒には毒の治療方法があるんです。それで毒針も作っていました」 「たかが花売りと馬鹿にするもんじゃないわね。広い知識も持ち合わせているんだ」  感心するナタリーだった。 「この辺りにははぐれメタルが、うようよいるようです。モトス村へ急ぎましょう」 「そうした方がいいみたいね。急ぎましょう」  こうしてモトス村へ駆け込むようにして入る一行だった。 「いちばん! モトス村に着いたわよ」 「やれやれ、やっとですね」 「あたしは、荷物の届け先の道具を探すわ。あなた達は、今夜泊まる宿屋を探してね」 「判りました」  と解散しようとした時、1匹の猫がリリアの足元にじゃれついた。 「あら、可愛い」  猫を抱きかかえるリリア。 「それにしても……」  と、辺りを見渡しながら、いぶかしげな表情をするコンラッドだった。 「(猫の頭を撫でながら)どうしました?」 「まだ日が高いと言うのに、村人が一人も出歩いていないというのは変ではありま せんか?」 「言われてみればその通りね。皆、教会にでも集まっているとか?」 「午前中ならともかく……。一人もいないというのは、やっぱりおかしいですわね」  一同が村内を見渡すと、至る所に猫がたくさんいるが、村人は人っ子一人見当た らない。 「村人全員が猫になっちゃったとか?」 「まさか……」  改めて抱いている猫を見つめるリリア。 「宿屋は後回しにして、村人がどこへ消えたか原因を突き止めましょう」 「そうね。とりあえず道具を訪ねてみましょう。そこに誰もいなければ……」  人っ子一人いない村の中を道具を探す一行。道具がどこにあるか尋ねる村人がい ないので難儀する。  やがて薬草らしき絵柄の看板が掲げてある店を見つけるリリア。 「あれがそうじゃない。きっと道具だと思うわ」 「そうみたいね。行ってみましょう」 「主人が猫に変えられていなければいいんですけどね」 「大丈夫みたいですよ。煙突から煙が上がっています。人がいる証拠です」 「なるほど。言われてみればその通りです」  煙突から煙の上がっている家の中へ入る一行。 「こんにちは!」  ナタリーが声を掛けると、家の奥から主人らしき人物が現れた。 「猫じゃないですね。この村ではじめて出会った人間です」  それを聞いて納得の表情を見せながら、 「いらっしゃいませ。どうやらこの村の異変に気が付いたみたいですね」  道具屋の店主が答える。 「ええ。人がいなくて猫ばかりがいます」 「あなたは?」  道具の女主人の顔を見て驚くナタリー。 「あなたの妹さん、とある王国の城下町南門で道具をやってらっしゃいますよね」 「ええ、妹が道具をやってますけど……。とある王国って?」 「あはは……。説明不足でまだ王国の名前を発表していないのよ」 「あら、まあ!」  これは済まぬことをした。作者は思いつつままに書いているので、つい忘れてし まったようだ。  とりあえずファンタリオン王国ということにしておこう。うん♪ 「妹さんにそっくりなのですぐに判りました」 「妹に会ってここへいらしたということは、何か頼みごとを依頼されませんでした か?」 「そうそう、これこれ」  そう言いながら、懐中袋から小箱を取り出した。 「妹さんから、これを姉のあなたに届けるようにと依頼されました」 「ありがとうございます。これを待ち望んでいたのです」 「それはいったい何なんですか?かなり大切なものらしいですけど」 「飛行船を使っちゃだめだの、移動魔法もだめ。と釘をさされましたからね。 28000マイラもの道のりを地べた這いずり回ってきたんですから」 「並々ならぬご苦労をお掛けして申し訳ありませんでした」  小箱を受け取りながら、恐縮する道具屋の娘だった。
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