冗談ドラゴンクエスト
冒険の書・11
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冒険の書・11 ペンジュラム
「ともかく出発しましょう」
リリアが促す。
「そうね。そうしましょう」
「お気をつけていってらっしゃいませ。妖精の森は、村を出て南西の方角です」
道具屋に見送られて出発する一行だった。
そんなこんなで、道中に出現するモンスターを討伐しながら、妖精の森へとやっ
てきた。
うっそうと樹々の茂った森の中、日が射さない苔むした地面を、足を取られない
ように慎重に歩みを進める。
「なんとなく不気味な森ですね」
「またぞろ人面樹が出てきそうね」
ナタリーが言うが早いが、目の前に人面樹が現れた。
「いきなりですか」
と言いつつ、剣を抜くコンラッド。
「ナタリーさんが人面樹が出そうっていうから」
「まさか、本当に出てくるなんて思わなかったわよ」
人面樹は、ブツブツと呪いの言葉を投げかけている。
「はやいとこ片付けましょ。それとも逃げる?」
「騎士のわたしに逃げろと?」
「わたしは逃げるのに賛成ですが……」
「どうする?騎士さん」
「逃げたくはありませんが……」
「気持ちはわかります」
人面樹の後方から、わらわらと湧き出している。
「やっぱり逃げたほうが無難ね」
「賛成!」
「仕方がありませんね。逃げましょう」
「でも、どっちの方向へ逃げるべきか」
「妖精の森は帰らずの森。一度足を踏み入れたら二度と戻れない森……」
「永久に森の中をさ迷うはめに陥るらしいですね」
「占ってみましょう」
「占う?」
「やみくもに逃げ回るよりもいいでしょう」
そういうと、ポシェットから何かを取り出した。
それはペンジュラムと呼ばれる魔法の振り子であった。
「それは?」
コンラッドが不思議な顔をしている。
剣で生きて来た者には、魔法のアイテム及びその効能など理解不可能であろう。
「ペンジュラムです。ダウジングという魔法を掛けて探しているものを見つけます」
「なるほどね。良いもの持ってるじゃん」
などと会話している間にも、人面樹は次々と襲い掛かる。
腕利きのコンラッドが適当にあしらっていた。
逃げると決定したものの、目的の物を見出すまでは、完全撤退はできないのだ。
「これでマンドレイクを探し出します」
「まかせたわ。人面樹はあたし達が処理するから」
「お願いします。では……」
リリアが何やら呟くと、ペンジュラムが振れて行くべき方向を示した。
「あっちの方向です!」
「急ぎましょう。日が暮れ始めています」
「そうね。夜になれば魔物の数も一段と増えるから」
そうこうするうちに、人面樹の群れから逃れられ、少し開けた場所に出た。
「リリアは花摘みが日課だったから、植物を探すのは得意なのよね」
「ええ、まあ……」
「しかし……見つけたとしても、どうやって採集するかが問題ですね」
「そうね。ここには犬はいないわ」
「うさぎとか、野獣でも捕らえれば代理はできそうですが」
「動物虐待はダメです」
生殺与奪には賛成できないリリア。
「じゃあ、どうするの?」
「まかせてください」
「まかせましょう」
リリアはペンジュラムに神経を集中してマンドレイクを探しはじめた。
川沿いにしばらく歩いて。
「ありましたわ」
木陰にひっそりと茂るマンドレイクを指差すリリア。
「これがマンドレイク?」
「確かによく見れば、人の形をしていますね」
「それでどうするの?」
「これを使います」
と、取り出したのは、メタルスライムを倒したアレである。
「聖水ね?」
「マンドレイクに宿る悪しき魂を浄化します」
「なるほど、そういう手がありましたか」
戦闘能力は皆無に近いリリアであるが、植物に関する知識は豊富のようである。
「皆さん、念のために耳を塞いでください」
「わ、分かったわ」
言われた通りに両手で耳を塞ぐナタリーとコンラッド。
何やら呪文のような言葉を呟きながら、マンドレイクに聖水を振り掛けると、
「ギャー!!」
森中に響き渡る悲鳴のような雄叫びを上げるマンドレイク。
マンドレイクの悲鳴が上がったが、一行に変化はなかった。
慎重にマンドレイクを引き抜くリリア。
「皆さん、もう大丈夫ですよ」
と身振り手振りで、塞いでいる耳から手を離すように伝えた。
「採れましたわ」
「大丈夫なの?」
恐る恐る近づいて、マンドレイクに触るナタリー。
「(ツンツンと突きながら)大丈夫みたい……ね」
「日が傾きかけています。戻りましょう」
「そうですね。暗くなると人面樹も増えて、攻撃もきつくなりますから」
急ぎ足で、モトス村へと戻る一行だった。