プリンセスドール/メイドとして(1)

 車は玄関の車寄せに停車した。  そこにはずらりとメイド姿の女性達が並んでいた。  男が車を降りると、 「いらっしゃいませ!」  一斉に挨拶をするメイド達。  その中から一人の女性が前に進み出てくる。  おそらくこの館の女主人なのであろう。 「お久しぶりです。黒崎さま」 「新しいメイドを連れてきてやったぜ」 「それはまあ……ありがとございます」  といいながら、車の中にいたわたしに視線を移す女性。 「どうだ。いい娘だろう」 「そのようですわね。経験は?」 「男が一人いるだけだったようだ。一から教えなければならないが、それだけの価値はあ る」 「結構ですわね。受け入れましょう」 「よろしく頼む」  と言ってから、 「理奈を降ろせ!」  子分に命じた。 「おい。降りろ!」  逆らっても無駄なこと。  わたしは仕方なく車から降り立った。 「なかなか良いプロポーションをしているわね」 「だろ?」 「しばらく様子を見てから、あなたの口座に適当な金額を振り込んでおくわ」 「よろしく頼むぜ」  振り向いて車に乗り込む男。 「ありがとうございました」  メイド達が一斉に見送りの言葉を発している。  その声に送られてそして、わたしを残して走り去ってしまった。 「さてと、あなたは今日からこの黒猫館の一員となったのよ。気持ちを入れ替えておきな さいね」  やさしい言葉使いではあったが、冷徹な響きがこもっているように感じられた。 「さあ、みなさん。館に戻って、早速儀式をはじめますからね」  ぞろぞろと中に入っていくメイド達。  儀式? 「あなたがこの館の一員、つまりメイド達の仲間入りする儀式です」  女主人が言った。 「ついてきなさい」  と言って先に立って歩き出す女主人だった。  その後についていくと、他のメイド達もついて来ていた。  とある部屋の前で止まる女主人。  メイドの中から二人が進み出て、扉を開けた。  重厚な扉が静かに開いていく。 「ここです。入りなさい」  そこは豪勢な造りの部屋だった。  天井からはシャンデリア。  何千万円もしそうな調度品の数々。  そして部屋の中央には、天蓋のある大きなベッドが置かれてあった。  メイド達は静かに部屋の中へ進み、そのベッドを囲むような配置を取った。  背後で扉が閉められた。 「服を脱ぎなさい」  反抗を許さない厳粛な響きのある声だった。  言うことを聞くしかないだろう。  仕方なく衣服を脱いでいくわたし。  メイドが脱いだ衣服を受け取る。 「ランジェリーも全部脱いで、ベッドに上がりなさい」  さすがに他人の前で裸になるのには躊躇する。 「恥ずかしがらないで、ここにいるのはみんな仲間のメイドです」  仲間と言われても、今日あったばかりで自己紹介すらも済んでいない。  ここは言うことを聞くしかないだろう。
     
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