死後の世界と民族の神話
霊魂
 一般的に人間は霊魂と肉体との結合よりなり、この結合の分離が死滅と考えられている。また死後も霊魂は永久に知性と意志をもって生存するとされる。そして時を待って、再びこの世に転生するという考えも存在する。がためにそのときの身体を確保するためにエジプトなどではミイラが作られもした。
 死人が出たとき、鏡に写った自分の霊魂を死者がつれ去ることを恐れたため、その家にある鏡におおいをかけたり後ろ向きにしたりする風習がある。また自分の本名を秘密にしたりする場合もある。
 霊魂の科学的解明として、オーラの観察とか、人が死んだ途端体重が軽くなるという報告がある。それが正しいとすると、相対論でいうところのE=MC^2という式からして、恐るべき質量エネルギー変換能力をもった凄い奴といえよう。鉄棒を簡単にねじ曲げたり家を押し潰したりするのは朝飯前なはずだ。

遊離霊
 霊魂観念の一種。おもに生きた身体から分離し、自由に出入りすることのできる霊魂のこと。ドイツの心理学者、W.ヴントがその著書<民族心理学>10巻において指摘した。
 人が眠っているとき、霊魂が身体から遊離すると広く信じられ、寝ている人の身体の位置を移動したり、無理に起こしてはいけないとされている。急に起こされて意識が朦朧とするのは、遊離した霊魂が身体に戻りきれなくて空白状態を作るためだとかんがえられている。また、はじめて来た土地なのに以前来たことがあるというデジャブーとよばれる現象も遊離した霊魂が体験した記憶が残っているためだとされている。

 人が眠っているときに見る特異な体験。  夢見る<私>は<私>でありながら、現実の<私>との間には断絶があり、その行動は不合理で根拠がなく奇怪きわまるものがある。これを科学的に説明するならば、睡眠時においても覚醒している神経細胞が存在し、眠りの深さによってその比率は変化する。その覚醒している神経細胞の活動が夢であり、それは人の記憶を元に再生される。その記憶とは神経細胞の連絡網によって支えられており、眠りによって各所が切断されていることによって、夢の中の行動も不条理とならざるをえない。

精霊
 動植物や無機物に宿る人格化された霊魂の総称。

妖精
 人間の姿をしていて、魔力をもって人に能動的になんらかの働きかけをする超自然的な存在。ケルト・ラテン民族の<fairy>、ゲルマン民族の<Elf>、ホメロスに登場する<ninf>などが知られている。だいたい人には危害を加えることは少ない。

夢魔
 夢の中に現れて人を苦しめ、時として命まで奪う悪魔。北欧神話の<Alp>などが代表的。

妖怪
 民族学的に信仰の普遍性が失われて零落した神々や精霊の姿をさす。その出現場所や時期が限られていて、ゆえに避けて通ることができ、特定の人を選んで出現することもない。漫画家の水木しげる氏が好んで題材としているのは有名。子泣きじじい、砂かけ婆など。

Manes
 ローマ人の信仰で死者の名称。くわしくはディイー・マーネース<dii manes> といい、良い神の意味である。死者の霊は超自然力をもってわざわいを寄せ付けないと信じられ美しい称賛の名で呼ばれた。敵意をもった幽霊と呼ぶときはレムレース<lemures>またはラルウェア<larvae>と呼んで区別した。5月9、11、13日には幽霊が出てくるとされ、これらの日をレムリア<Lemuria>と呼んで、家の主人が真夜中に幽霊どもに後ろ向きで黒豆を投げ与え<manes exite paterni>先祖の幽霊立ち去れ、と9回唱えて追い払った。日本での節分に良く似た風習だが、ユーラシア大陸の東と西のほぼ両端で、死後の世界観に共通するものがあるというところに興味がある。元をたどっていけば、アヴェスタ・ヴェーダ神話に行き着くのではないだろうか。それを流布せしめたのは、マニ教の信者達であった。

マニ教
 ゾロアスター教から派生した、キリスト教・仏教を合わせ持った宗教。教祖マニが残した遺書をその聖典とする。その教義は光明=善と暗黒=悪との自然的二元論を根本としている。中央アジア一帯から発展をとげ、4世紀にはローマ帝国にはいって、時のローマ・カトリック教会をあわてさせ、布教禁止令をださせるほど広まった。  13〜14世紀にかけて急激に衰えて滅亡したが、東西の宗教・文化を結びつける点で多大な影響を与えた。

マナ
 メラネシアの宗教にみられる不思議を働く超自然的な力の観念。<Mana>