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難病(特定疾患)と生活保護・社会保障を考える【携帯/モバイル版】

この場を借りて、難病(特定疾患)と生活保護などの社会保障制度について考えてみたいと思います。

◆ 病型(タイプ)について ◆


(監修:信州大学医学部附属病院遺伝子診療部 古庄 知己先生)


(エーラス・ダンロス症候群=Ehlers-Danlos Syndrome[EDS]とは)

 EDSと診断され、また可能性を示され、ご心配、ご不安を持っておられることかと思います。EDSについての現状を整理いたしましたので、ご参照下さい。

 皮膚、血管、関節、内臓などの結合組織の生まれつきの“もろさ”により、さまざまな症状を持つ疾患です。コラーゲン遺伝子やコラーゲン修飾酵素の遺伝子の変化により生じます。

 主な症状には、皮膚や関節が伸びやすく、切れやすい、皮膚や血管がもろく、出血しやすい、が挙げられますが、症状は病型によって、また同じ病型でも個人によって異なります。

 病型(タイプ)は、その症状の特徴から、6つに大別されます(次項参照)。病型の正確な判定は、定期検診や救急医療体制の整備に必要不可欠なものですが、しばしば難しく、また他の結合組織疾患(マルファン症候群など)との鑑別を要することもあります。EDSとの診断、および病型の確定には、経験の豊富な医師による診察が最も重要です。病型によっては、生化学検査や遺伝子検査によって確認を行います。

(診療科と予後)

 EDSの症状や経過についての情報は少しずつ集積しつつあります。遺伝子の変化に根本的対応するような治療は研究段階ですが、おきやすい症状を知り、医療機関と連携をとって、丁寧に検診、治療を行っていくことが勧められます。できれば、お子様であれば小児科(総合病院の慢性疾患外来や小児病院の遺伝科外来)、成人の方であれば大学病院など総合病院の総合診療科や遺伝子診療部でコーディネートしてもらうとよいでしょう。症状により、整形外科、循環器科、皮膚科などに紹介受診していきます。遺伝形式は、病型によって異なりますので、家族計画に関する相談は、個別に丁寧に対応する必要があります(それには、「遺伝カウンセリング」という診療サービスがあります)。得られる社会資源を活用しましょう。お子様ですと、小児慢性特定疾患の申請ができます。成人の特定疾患(いわゆる難病)には指定されていませんが、障害の程度により身体障害者手帳などの申請ができるかもしれません。

(病型)

古典型(Classical type;旧分類T型、U型)
@ 原因:X型コラーゲン遺伝子(COL5A1、COL5A2)またはT型コラーゲン遺伝子(COL1A1)の変化による。
A 遺伝:常染色体優性遺伝。
B 皮膚:皮膚の感触はビロード状で、打撲または摩擦等の衝撃で簡単に裂けやすく、また裂けた後の傷も治りにくい(脆弱性)。皮膚をつまむと数cmものび、離すと元に戻る(過伸展性)。シガレットペーパー様と呼ばれる瘢痕(細かい皺の集まった傷痕)を形成しやすい。
C 骨関節:大・小関節の可動域が広い(過伸展性)。脱臼しやすい。
D その他:
血管症状では血管破裂、静脈瘤がみられる(易出血性)。
胎児期:胎盤の早期剥離、前期破水による早産になりやすい。
心臓:僧帽弁逸脱がみられることがある。
膀胱憩室、消化管憩室(器官壁の一部が内圧等により小さな袋状に突起する)
目の症状では網膜剥離がみられることがある。
体が疲れやすい(易疲労性)。

*旧分類では、症状が強いものをT型、弱い方をU型と呼んでいました。


関節過可動型(Hypermobile type;V型)
@ 原因:不明。
A 遺伝:常染色体優性遺伝。
B 皮膚:T型と同様の症状だが、過伸展性は軽度で、また裂傷や瘢痕も稀である。
C 骨関節:全身の関節(肩、膝蓋骨、顎など)が緩く、脱臼しやすい。慢性的な関節・四肢痛を伴うこともある。
D その他:
僧帽弁逸脱、大動脈基部の拡張がみられることがある。


血管型(Vascular type;W型)
@ 原因:V型コラーゲン遺伝子(COL3A1)の変化。
A 遺伝:常染色体優性遺伝。
B 皮膚:皮膚が薄く、静脈が透けて見える。過伸展性はごく軽度である。皮下出血を反復しやすい。シガレットペーパー様と呼ばれる瘢痕を形成しやすい。
C 骨関節:過伸展性は軽度(小関節が主)。時に靭帯損傷をおこす。先天性内反足を持つことが時にある。
D その他:
動脈破裂:胸腹部、頭、足などの動脈がもろい。動脈瘤、動脈解離が先行することもある。
内臓破裂:消化管(S状結腸が多い)破裂を起こしやすい。妊娠中子宮破裂を起こすことがある。気胸を起こすこともある。


後側彎型(Kyphoscoliosis tyep;Y型)
@ 原因:コラーゲン修飾酵素(できたままの“生”のコラーゲンを“使える”成熟したコラーゲンに仕上げる酵素)であるLysyl hydroxylase(PLOD)の変化。
A 遺伝:常染色体劣性遺伝。
B 皮膚:T型と同様で、症状は中程度。
C 骨関節:やせ型。進行性脊椎後側彎がみられる。骨粗鬆症。
D その他:
眼症状:角膜異常、強度の近視、網膜はく離、まれに眼球破裂。眼球の強膜はもろい。
動脈:破裂することがある。
筋緊張低下を伴いやすい。

*同様の症状を持ちながらも、Lysyl hydroxylaseの変化が確認されるものはYA型、確認されないものはYB型と分類されている。


多発性関節弛緩型(Arthrochalasia type;ZA、ZB型)
@ 原因:T型コラーゲン遺伝子(COL1A1、COL1A2)の変化。
A 常染色体優性遺伝。
B 皮膚:過進展性、皮下出血ができやすい。
C 骨関節:全身性の関節過進展性が強く、脱臼を繰り返す。先天性股関節脱臼。脊椎後側彎。骨粗鬆症。
D その他:筋緊張低下。


皮膚弛緩型(Dermatosparaxis type;Z型C)
@ 原因:コラーゲン修飾酵素であるprocollagen T N-terminal peptidaseの変化。
A 遺伝:常染色体劣性遺伝。
B 皮膚:ごわごわした肌触りであるが、全体として柔らかく緩い。皮下出血しやすい。
C 骨関節:過進展性。骨粗鬆症。
D その他:胎児において、前期破水による早産をしやすい。そけい・臍ヘルニア。

 認知度がまだ十分高いとはいえませんが、予防や症状の早期発見への努力、根本的治療への基礎的研究も、少しずつ進んでおります。大切なことは、ご自身の体質の特徴をよく理解され、信頼できる医療機関と連携し、ともに学びながら、丁寧に検診、救急時の対応などの計画を立てていくことです。
 その際に、本稿が少しでもお役に立てば幸いです。


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