難病(特定疾患)と生活保護・社会保障を考える【携帯/モバイル版】

この場を借りて、難病(特定疾患)と生活保護などの社会保障制度について考えてみたいと思います。

特発性間質性肺炎/特定疾患情報(公費負担)

認定基準診断・治療指針

1. 特発性間質性肺炎とは
肺は柔らかい小さな袋(肺胞:はいほう)の集まりで、その中に空気をたっぷり含んでいます。小さな袋の壁は大変薄いのですが、その中にいろいろな細胞とともに血液を含む血管が含まれています。私たちは、無意識のうちに肺の中に空気を出したり入れたりしていますが、肺の中では肺胞の薄い膜を通して、空気から血液中に酸素が入り、逆に老廃物である二酸化炭素が空気中に放出されています(いわゆる肺呼吸)。

"間質性肺炎"は何らかの原因(関節リウマチ、皮膚筋炎、全身性強皮症などの膠原病、なんらかの物質の吸入、薬剤など)で肺胞の壁の中や周辺に"炎症"(皮膚で言えばやけど、肝臓で言えば肝炎のようなもの)が起こり、細胞やコラーゲンなどが増加し壁が厚くなる病気です。そのため咳が出たり、酸素がうまく取り込めなくなり息苦しくなります。一過性の場合もありますが、"炎症"が治った後も傷が残り肺が固くなる場合があり、更に不可逆的に増悪し、肺がどんどん固くなり膨らみにくくなり、呼吸が維持出来なくなる場合もあります("肺線維症"と言われますが、皮膚で言えばケロイド、肝臓で言えば肝硬変のようなもの)。(図1参照)

肺炎と言えば、普通は何らかの微生物による感染であり、抗生物質などの治療で軽快しますが、抗生物質の効きにくい肺炎や胸のレントゲン検査で左右にわたって病気の影があるような場合は間質性肺炎も疑う必要があります。

図1

"特発性間質性肺炎"は"間質性肺炎"の中でも原因がわからない一群の病気です。最近国際的に分類が整理され、日本でも分類や診断基準が新しくなりました(第4次改訂)。その結果、特発性間質性肺炎は7種類に分類されることになりました。つまり(1)特発性肺線維症(図 胸部レントゲン像)、(2)非特異性間質性肺炎、(3)急性間質性肺炎、(4)特発性器質化肺炎、(5) 剥離性間質性肺炎、(6) 呼吸細気管支炎関連性間質性肺疾患、(7)リンパ球性間質性肺炎です。

それぞれの病気は検査方法、治療方針、治療効果や予後(どれくらい肺がもつか)など異なっており、特発性間質性肺炎の中のどれであるか診断することは重要です。最近の診断基準では高分解能コンピューター断層撮影(HRCT)が診断に有用とされ、気管支鏡などで診断がつかない場合、更に手術による肺生検(胸腔鏡での肺生検、開胸肺生検)が必要になる場合もあります。
(図2参照)。

図2

2. この病気の患者さんはどのくらいいるのですか
だいたい10万人あたり3〜5人ほどといわれています。最近増加しているとも言われています。最近は胸部CTが普及し早期に発見される事もあり、実際には頻度はもっと多くなる可能性があります(精密検査にはHRCT検査が必要とされています)。7つの病気のなかでは特発性肺線維症、非特異性間質性肺炎、特発性器質化肺炎の頻度が多く、それ以外はあまり多くありません。

3. この病気はどのような人に多いのですか
特発性肺線維症は50才以上で症状を認めることが多く、男性は女性よりやや多いようです。非特異性間質性肺炎はもう少し若い時期に症状を認めるようです。剥離性間質性肺炎と呼吸細気管支炎関連性間質性肺疾患は喫煙者に多いと言われています。

4. この病気の原因はわかっているのですか
原因は不明です。剥離性間質性肺炎と呼吸細気管支炎関連性間質性肺疾患では喫煙との関連が指摘されています。

5. この病気は遺伝するのですか
はっきりとした遺伝形式は証明されていません。まれに家族性に発症したとの報告もあります。

6. この病気ではどのような症状がおきますか
はじめは空咳(痰のない咳)や、運動時(あるいは坂道や階段で)の息切れが認められます。進行すると少しの労作でも息切れを感じるようになります。指の先がばち状に太くなることがあります。

7. この病気にはどのような治療法がありますか
病気が安定し進行がゆっくりしている場合は症状に対応した治療(咳止めなど)、あるいは無治療で経過を見る場合もあります。どんどん悪化する場合は多くの場合、ステロイド、免疫抑制剤などが使用されます。特発性間質性肺炎の中の7つの病気の診断に応じて、さらに個々の患者様の状態に応じて治療方針が決定されます。

病気が進行し酸素が足りなくなる場合は("呼吸不全"と言います)、酸素療法(在宅酸素療法など)が行われ、必要であれば呼吸リハビリも行われます。さらに心臓まで弱った場合(心不全と呼びます)は心不全の治療も行われます。

予後があまり期待できない患者様で一定の厳しい基準を満たす場合は肺移植の適応があります。
一般的にステロイドや免疫抑制剤の治療は長期になるため、副作用の対策も必要です。また風邪の予防、禁煙、規則正しい生活など一般的な日常生活の管理も重要です。

8. この病気はどういう経過をたどるのですか
特発性肺線維症では治療(ステロイドや免疫抑制剤)の効果が十分ではなく3〜5年くらいで悪化してしまう場合があります。尚、風邪などを契機に短期間で急に悪化すること("急性増悪"と呼びます)があり注意が必要です。非特異性間質性肺炎や特発性器質化肺炎の中には治療に極めて良く反応し予後良好な場合もありますが、軽快増悪を繰り返す、あるいは7〜10年で徐々に悪化し予後不良となる場合があります。剥離性間質性肺炎と呼吸細気管支炎関連性間質性肺疾患は一般的に予後は良好とされています。急性間質性肺炎は急激に発症し予後はあまり良くありません。

特発性間質性肺炎と診断された後、長年経過を追っている間に膠原病等の症状が明らかになり後で膠原病等と再評価される場合があります。また特発性間質性肺炎では肺がんを合併する頻度が高いと言われています。病状が安定していても、定期的な検査を受けることが必要です。

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