難病(特定疾患)と生活保護・社会保障を考える【携帯/モバイル版】

この場を借りて、難病(特定疾患)と生活保護などの社会保障制度について考えてみたいと思います。

肺リンパ脈管筋腫症(LAM)/特定疾患情報

診断・治療指針

 注:文中の「TSC」は、病名を指す場合はTSC、遺伝子名を指す場合はTSC(イタリック体)で表記しています。

1. 肺リンパ脈管筋腫症(LAM)とは
 リンパ脈管筋腫症(lymphangioleiomyomatosis : LAM)は、異常な平滑筋様細胞(LAM細胞)が、肺を中心としてリンパ節、腎臓(血管筋脂肪腫)、などで増殖する稀な病気です。ほとんどは妊娠可能な女性に発症すると言われています。臨床的には肺病変が重要であり、難病として問題になるのは肺リンパ脈管筋腫症(pulmonary lymphangioleiomyomatosis; 肺LAM)と考えられます。肺ではびまん性にLAM細胞が増殖し、無数の小さな穴(嚢胞)が生じ、進行すると呼吸不全に至る難治性疾患です。文献上1937年に最初に報告され、1977年にCarrington(カリントン)らにより命名された疾患ですが、日本では1970年に山中と斎木によりび慢性過誤腫性肺脈管筋腫症として報告されました。LAMは単独で発生する場合(孤発性LAM;sporadic LAM)と、結節性硬化症という病気に伴って発生する場合(結節性硬化症に合併したLAM; TSC-LAM)の2種類があります。

2. この病気の患者さんはどのくらいいるのですか
 どの位の患者さんがいるのか、実数はわかっていません。日本では、平成15・16年に厚生労働省難治性疾患克服研究事業「呼吸不全に関する調査研究班」(久保恵嗣班長)で医療施設を対象とした全国疫学調査が行われ、173人の患者さんの情報が集まり検討されました。その結果、日本でのLAMの有病率は100万人あたり約1.2〜2.3人と推測されています。一方、北米では現在約400人の患者さんが知られていますが、結節性硬化症の女性患者の数%から30%にLAMを認めるとの報告から推定すると、約7,000人の女性結節性硬化症にLAMがあるとも言われています。

3. この病気はどのような人に多いのですか
 sporadic LAM も、結節性硬化症に合併するLAMも、ほとんどは妊娠可能な女性に発症しますが、閉経後に診断される患者さんもあります。稀ですが、男性の報告もあるようです。30才代半ばで診断され、30才代に診断年齢のピークがあります。人種、喫煙との関係は明らかではありません。一般に妊娠や女性ホルモン(経口避妊薬等のエストロゲン製剤)服用で症状が出現、悪化すると言われていますが、肺機能の悪化もなく正常に出産した報告もあるようです。

4. この病気の原因はわかっているのですか
 結節性硬化症では、TSC1、あるいはTSC2 という細胞増殖を抑制する遺伝子に異常が認められ、その結果、異常細胞、すなわちLAM細胞、が増殖するのではないかと考えられています。 sporadic LAM でも、LAM細胞に TSC2 遺伝子の異常が検出されるとの報告があり、原因のひとつと考えられています。LAM細胞は、コラーゲンなどの細胞外基質を分解する酵素を出して肺などを破壊するのではないかと考えられています。

5. この病気は遺伝するのですか
 sporadic LAM では、遺伝するとは考えられていません。結節性硬化症は常染色体優性遺伝を示す疾患であるため、結節性硬化症は子供に1/2の確率で遺伝します。結節性硬化症の患者さんは、脳、皮膚、心臓、肺、腎臓、などの様々な場所に病気が起こりますが、生じる病気の組み合わせは様々です。従って、結節硬化症であってもあまり明らかな異常を示さない場合(不全型)もあります。また、結節性硬化症が遺伝しても、皆がLAMを発症するわけではありません。

6. この病気ではどのような症状がおきますか
 主な症状は肺病変によるもので、労作性呼吸困難、咳嗽、血痰、喘息様の喘鳴、などを認めます。進行すると、安静にしていても呼吸困難を感じるようになります。気胸、乳糜胸水や腹水を合併することがあり、それに伴う胸痛、呼吸困難を認めることがあります。腎臓の血管筋脂肪腫から出血を認めることもあります。結節性硬化症では、LAMによる症状の他に、てんかん、皮膚病変など結節性硬化症による症状も認められます。

7. この病気にはどのような治療法がありますか
 症状や合併症のある場合はその治療と対策が重要です。呼吸不全には酸素投与、繰り返す気胸には胸膜の癒着が必要です。乳糜胸水や腹水に対しては内科的、外科的治療が行われます。肺外の症状として、まれに腎血管筋脂肪腫から出血することもあり、血管塞栓術や外科的処置が必要になることがあります。呼吸不全が進行した場合は、肺移植の対象になりますが、肺移植の後、LAMが再発したとの報告もあります。LAMの発病や進行には女性ホルモンが関わっていると考えられ、性腺刺激ホルモン放出ホルモン誘導体(GnRH)、メドロキシプロゲステロン、卵巣摘出術、などのホルモン療法が行われています。これらは有効であったとの報告もありますが、効果に一定の見解はなく、今後、明らかにしなくてはなりません。

 病気の進行スピードは個人差があるため、すべての患者さんに治療が必要になるというわけではないようです。治療は、個々の患者さんの進行スピード、重症度などに応じ、生活の質を考慮し、心理的、社会的な配慮もしながら、慎重に選択する必要があります。

 LAMでは、病気の仕組みが徐々に明らかになりつつあり、有効な新規治療法の開発を目指して活発に研究がされています。

8. この病気はどういう経過をたどるのですか
 一般に、LAMは慢性に進行し呼吸不全に至る予後不良の病気です。古くは10年以内に多くの方が亡くなられると言われていましたが、平成15・16年に行われた日本の全国調査では、10年後の生存率は76%でした。病気の理解が深まるにつれて、長期間にわたって安定した呼吸機能を示すような軽症の方がいることもわかってきました。


この疾患に関する関連リンク

LAMの治療と管理の手引き(pdf 337KB)
LAMの診断基準(pdf 280KB)
LAMについてのよくある質問(pdf 874KB)


情報提供者
研究班名 呼吸器系疾患研究班(呼吸不全)
情報更新日 平成20年6月24日

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