難病(特定疾患)と生活保護・社会保障を考える【携帯/モバイル版】

この場を借りて、難病(特定疾患)と生活保護などの社会保障制度について考えてみたいと思います。

結節性動脈周囲炎(結節性多発動脈炎)/認定基準(公費負担)

特定疾患情報診断・治療診断

11-1.結節性動脈周囲炎(結節性多発動脈炎)

 【主要項目】

  (1) 主要症候
   @ 発熱(38℃以上,2 週以上)と体重減少(6 ヶ月以内に6kg 以上)
   A 高血圧
   B 急速に進行する腎不全,腎梗塞
   C 脳出血,脳梗塞
   D 心筋梗塞,虚血性心疾患,心膜炎,心不全
   E 胸膜炎
   F 消化管出血,腸閉塞
   G 多発性単神経炎
   H 皮下結節,皮膚潰瘍,壊疽,紫斑
   I 多関節痛(炎),筋痛(炎),筋力低下
  (2) 組織所見
    中・小動脈のフィブリノイド壊死性血管炎の存在
  (3) 血管造影所見
    腹部大動脈分枝(特に腎内小動脈)の多発小動脈瘤と狭窄・閉塞
  (4) 判定
   @ 確実(definite)
    主要症候2 項目以上と組織所見のある例
   A 疑い(probable)
    (a) 主要症候2項目以上と血管造影所見の存在する例
   (b) 主要症候のうち@を含む6 項目以上存在する例
  (5) 参考となる検査所見
   @ 白血球増加( 10,000/μ・以上)
   A 血小板増加(400,000/μ・以上)
   B 赤沈亢進
   C CRP 強陽性
  (6) 鑑別診断
   @ 顕微鏡的多発血管炎
   A ウェゲナー肉芽腫症
   B アレルギー性肉芽腫性血管炎
   C 川崎病血管炎
   D 膠原病(SLE,RA など)
   E 紫斑病血管炎

 【参考事項】
  (1) 組織学的にT期変性期,U期急性炎症期,V期肉芽期,W期瘢痕期の4つの病期に分類される。
  (2) 臨床的にT,U病期は全身の血管の高度の炎症を反映する症候,V,W期病変は侵された臓器の虚血を反映する症候を呈する。
  (3) 除外項目の諸疾患は壊死性血管炎を呈するが,特徴的な症候と検査所見から鑑別できる。

 表:結節性動脈周囲炎の重症度分類
1 度 ステロイド薬を含む免疫抑制薬の維持量ないしは投薬なしで1 年以上病状が安定し,臓器病変および合併症を認めず日常生活に支障なく寛解状態にある患者(血管拡張剤,降圧剤,抗凝固剤などによる治療は行ってもよい)。
2 度 ステロイド薬を含む免疫抑制療法の治療と定期的外来通院を必要とするも,臓器病変と合併症は併存しても軽微であり,介助なしで日常生活に支障のない患者。
3 度 機能不全に至る臓器病変(腎,肺,心,精神・神経,消化管など)ないし合併症(感染症,圧迫骨折,消化管潰瘍,糖尿病など)を有し,しばしば再燃により入院または入院に準じた免疫抑制療法ないし合併症に対する治療を必要とし,日常生活に支障をきたしている患者。臓器病変の程度は注1 のa〜h の何れかを認める。
4 度 臓器の機能と生命予後に深く関わる臓器病変(腎不全,呼吸不全,消化管出血,中枢神経障害,運動障害を伴う末梢神経障害,四肢壊死など)ないしは合併症(重症感染症など)が認められ,免疫抑制療法を含む厳重な治療管理ないし合併症に対する治療を必要とし,少なからず入院治療,時に一部介助を要し,日常生活に支障のある患者。臓器病変の程度は注2 のa〜h の何れかを認める。
5 度 重篤な不可逆性臓器機能不全(腎不全,心不全,呼吸不全,意識障害・認知障害,消化管手術,消化・吸収障害,肝不全など)と重篤な合併症(重症感染症,DIC など)を伴い,入院を含む厳重な治療管理と少なからず介助を必要とし,日常生活が著しく支障をきたしている患者。これには,人工透析,在宅酸素療法,経管栄養などの治療を要する患者も含まれる。臓器病変の程度は注3 のa〜h の何れかを認める。

注1:以下のいずれかを認めること
 a. 肺線維症により軽度の呼吸不全を認め,PaO2 が60〜70Torr。
 b. NYHA 2 度の心不全徴候を認め,心電図上陳旧性心筋梗塞,心房細動(粗動),期外収縮あるいはST 低下(0.2mV 以上)の1 つ以上認める。
 c. 血清クレアチニン値が2.5〜4.9mg/d ・の腎不全。
 d. 両眼の視力の和が0.09〜0.2 の視力障害。
 e. 拇指を含む2 関節以上の指・趾切断。
 f. 末梢神経障害による1 肢の機能障害(筋力3)。
 g. 脳血管障害による軽度の片麻痺(筋力 4)。
 h. 血管炎による便潜血反応中等度以上陽性,コーヒー残渣物の嘔吐。

注2:以下のいずれかを認めること
 a. 肺線維症により中等度の呼吸不全を認め,PaO2 が50〜59Torr。
 b. NYHA 3 度の心不全徴候を認め,胸部X 線上CTR60%以上,心電図上陳旧性心筋梗塞,脚ブロック,2 度以上の房室ブロック,心房細動(粗動),人工ペースメーカーの装着,の何れかを認める。
 c. 血清クレアチニン値が5.0〜7.9mg/d ・の腎不全。
 d. 両眼の視力の和が0.02〜0.08 の視力障害。
 e. 1 肢以上の手・足関節より中枢側における切断。
 f. 末梢神経障害による2 肢の機能障害(筋力3)。
 g. 脳血管障害による著しい片麻痺(筋力 3)。
 h. 血管炎による肉眼的下血,嘔吐を認める。

注3:以下のいずれかを認めること
 a. 肺線維症により高度の呼吸不全を認め,PaO2 が50Torr 未満。
 b. NYHA 4 度の心不全徴候を認め,胸部X 線上CTR60%以上,心電図上陳旧性心筋梗塞,脚ブロック,2 度以上の房室ブロック,心房細動(粗動),人工ペースメーカーの装着,のいずれか2 以上を認める。
 c. 血清クレアチニン値が8.0mg/d ・以上の腎不全。
 d. 両眼の視力の和が0.01 以下の視力障害。
 e. 2 肢以上の手・足関節より中枢側の切断。
 f. 末梢神経障害による3 肢以上の機能障害(筋力3),もしくは1 肢以上の筋力全廃(筋力2 以下)。
 g. 脳血管障害による完全片麻痺(筋力 2 以下)。
 h. 血管炎による消化管切除術を施行。


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