難病(特定疾患)と生活保護・社会保障を考える【携帯/モバイル版】

この場を借りて、難病(特定疾患)と生活保護などの社会保障制度について考えてみたいと思います。

肝内結石症/診断・治療指針

特定疾患情報

■概念・定義
 肝内結石症は、良性疾患でありながら複雑な病態を示し、完治が難しく再発を繰り返すことが少なくない。このため肝内結石症は難治性疾患として取り扱われており、厚生省特定疾患の1つとして、肝内胆管障害研究班が組織されその後厚生省特定疾患消化器系疾患調査研究班肝内結石症分科会、厚生労働省肝内結石症調査研究班と改称され現在も引き続き調査・研究が行われている。班研究では過去に4回の疫学調査を実施しており、時代とともに変化する肝内結石症の病像が明らかとなっている。また、班研究の一環として、取り扱い規約の整備や重症度判定基準、治療指針が策定されている。

■疫学
 肝内結石症の全胆石症における頻度が各国から報告されており、地域による著しい差異を認める。肝内結石症は、日本を含む東アジアに頻度が高く、類似した人種的背景を持つ場合でも大きな地域差が認められるのも特徴である。台湾では全胆石症例の20%以上に肝内結石を認めるのに対し、韓国では10.8%、香港では3.1%、シンガポールでは1.7%と報告されている。中国国内でも北京では9.2%なのに対し北西部の沈陽では21.2%と報告されている。西欧諸国ではその頻度は1%以下であり、殆どはアジアからの移民症例と推定されている。ラテンアメリカでは2-7%と比較的高頻度とも報告されている。同時代(1992年)の日本における肝内結石症の頻度は谷村らにより2.2%と報告されている。

■病像の変遷
 1998年度調査では肝内結石症有病者の平均年齢は63.3歳であり1970-77年調査の平均51.3歳に比し12歳高齢化している。この平均年齢は有病者のものであり、高齢化は新規症例の減少も意味している。過去30年間にわたり男女比に変化は認められない。肝内結石症が全胆石症に占める割合は、肝内結石症調査研究班による過去4回の疫学調査結果で、1970-1977年で4.1%(1,590/38,606)、1975-1984年で3.0%(4,381/148,017)、1985-1988年で2.3%(1,813/79,052)、1989-1992年で2.2%(2,353-105,062)、1993-1995年で1.と年代を追って減少傾向が認められる。時期を同じくして、胆嚢コレステロール結石症の罹患率は上昇しており、肝内結石症の頻度の減少に分母の増大として関与している可能性もあるが、同様の減少傾向は台湾や韓国においても報告されている。

 病型をみると、1998年調査では肝内限局型が57.9%と多数を占めるようになった。肝内型は1975〜1984年の集計では20.6%であり時代とともに肝内型の割合が急速に増大している。結石存在葉は何れの調査でも左右約60%ずつであり、時代的変遷はない。またL型は何れの調査でも45%程度である。

 従来肝内にはコレステロール石は形成されないと考えられてきたが、1985-1988調査で8.5%、1989-1992年調査で13.1%の肝内結石がコレステロール胆石と報告された。平成11年度の集計では5.8%がコレステロール石であったとも報告されているが、両者とも調査票による症例調査であり、直接の比較は困難である。しかしながら、依然として肝内結石症ではビリルビンカルシウム石が主体である。

■病因
 肝内結石の成因には先天性・遺伝性因子よりはむしろ食事内容や衛生環境といった後天性因子が関与している可能性が高いと考えられている。具体的には、ビリルビンカルシウム石では、胆道感染、ムチン、胆汁成分あるいは胆管の病理形態学的変化などが検討の対象となっている。コレステロール石では過飽和胆汁、apolipoprotein A-1などが検討されている。

 なお最近の調査で、小児成人に関係なく、先天性胆道拡張症の術後に肝内結石が 7〜8%の頻度で発生することが判明した。全例ビリルビン結石であり、結石発生までの平均期間は小児例で6.8年、成人例で10.3年である。胆管狭窄あるいは吻合部狭窄の存在に加え、胆管空腸吻合により細菌感染をきたしやすいことが成因として考えられている。

■治療
 治療は大きく手術的なものと非手術的なものに分けられる。肝切除術が最も多い手術的治療法であり1985-1988調査で44%の症例で、1989-1992調査で症例の50.1%に施行されている、非手術的なものでは経皮経肝胆道鏡(PTCS)による治療がひろく施行されるようになってきており、1985-1988調査で8.6%の症例に1989-1992調査では14.8%の症例に行われている。

■予後
 平成5年の全国集計では,短期予後が検討されている。

 60歳以下の社会復帰率は,肝切除術94.0%,PTCS83.6%であり, 全体としては高いもののPTCSが低い値であった。5年以内結石再発率をみると,肝切除術5.3%,PTCS9.6%であり,PTCSが高い値を示した。他病死を除く5年以内死亡率は,肝切除術2.4%,PTCS5.5 %であった。

 PTCSは,治療困難例や全身状態の悪い症例に施行されることが多 く,これが上記のような数値に反映されたものと考えられる。


肝内結石症に関する調査研究班から

肝内結石症 研究成果(pdf 32KB)
 この疾患に関する調査研究の進捗状況につき、主任研究者よりご回答いただいたものを掲載いたします。


情報提供者
研究班名 消化器系疾患調査研究班(難治性の肝・胆道疾患)
情報見直し日 平成20年4月25日

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