1. 偽性副甲状腺機能低下症とは
血液中カルシウム濃度の維持に欠かせない副甲状腺ホルモンの分泌は保たれていますが、副甲状腺ホルモンが作用する臓器の反応性が障害されているために、血中のカルシウム濃度の低下やリン濃度の上昇など、副甲状腺ホルモンが不足した時と同じような状態を呈する先天的な疾患の総称です。
2. この病気の患者さんはどのくらいいるのですか
1998年の全国調査の成績から、全国で約430例程度とかなり稀な病気です。
3. この病気はどのような人に多いのですか
家族性がしばしば見られますので、ご家族の中にこの病気の方が居られる時には検査を受けた方が良いでしょう。男性に比べて女性に僅かながら多い傾向が見られます。
4. この病気の原因はわかっているのですか
副甲状腺ホルモンは、細胞膜にある受容体と呼ばれる蛋白と結合した後、G蛋白という細胞膜の蛋白を活性化することにより作用を発揮します。この病気の患者様では、G蛋白の遺伝子に異常が認められることがあります。これによりホルモンの作用が出にくくなる事が、少なくとも一部のこの病気の原因と考えられています。ただし、この病気の原因は完全には解明されておらず、現在も研究が進められています。
5. この病気は遺伝するのですか
上で述べましたG蛋白遺伝子の異常は、遺伝することがあります。その為に同じ家族内にこの病気の患者さんが見られる事があります。
6. この病気ではどのような症状がおきますか
副甲状腺ホルモンは血液中カルシウム濃度の維持に必須のホルモンです。このため副甲状腺ホルモンの作用が障害されることによって、主に血液中カルシウム濃度が低下することよる症状が現れます。特に、テタニーと呼ばれる特徴的な手足の筋肉の痙攣や、手足や口の周りの痺れ感などが多く見られる症状です。痙攣は高度の場合には全身に及んだり、またてんかん様の発作を示す事もあります。また知能発達や歯の発育が障害される場合もあるほか、白内障なども起こりやすくなります。
7. この病気にはどのような治療法がありますか
活性型ビタミンD3製剤を服用して戴く事で、血液中カルシウム濃度をほぼ正常に維持する事が出来ます。血液カルシウム濃度の低下が改善すると、上記の症状は殆ど見られなくなります。
8. この病気はどういう経過をたどるのですか
先天性の遺伝子異常による病気ですので、原因自体を直すことは現状ではできません。しかし活性型ビタミンD3製剤による治療を継続して血液中カルシウム濃度をほぼ正常に維持することにより、殆ど自覚症状もなく通常の生活を営む事ができます。
情報提供者
研究班名 内分泌系疾患調査研究班(ホルモン受容機構異常)
情報更新日 平成20年6月21日
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