難病(特定疾患)と生活保護・社会保障を考える【携帯/モバイル版】

この場を借りて、難病(特定疾患)と生活保護などの社会保障制度について考えてみたいと思います。

副腎酵素欠損症/診断・治療指針

特定疾患情報

P450 oxidoreductase 欠損症

■概念

 P450 oxidoreductase(POR)は膜結合型 flavoprotein であり、マイクロゾームに存在するすべてのP450酵素群に電子伝達を行う酵素である。この異常によりマイクロゾームに存在する21-水酸化酵素と17α-水酸化酵素の複合欠損、さらには胎盤のP450arom(アロマターゼ)活性低下を伴うこともある。またコレステロールの合成にもP450が関与するため、細胞内コレステロールの減少により、様々な骨奇形を合併すると考えられている。以前より頭蓋骨早期癒合症などの多発奇形をともなうAntley-Bixler症候群のなかにはステロイドの産生異常を有する症例が報告されていた。このような症例はPORの異常による。

■疫学
 正確な頻度は不明であるが、世界で40例以上、本邦では10例以上の報告を認める。

■病因
 PORは膜結合型 flavoproteinでNADPHから二つの電子を受け取り、P450に移行させ,触媒反応を進行させる。その構造はFMN結合領域,Hinge領域、FAD結合領域、NADPH結合領域よりなる。PORは全てのマイクロゾーム型のP450に必要であることから、その異常は致死的と想像されていた。しかしその異常(ミスセンス変異、フレームシフト変異、スプライシング変異)によってヒトの疾患が存在することが明らかになった。日本人には特にエクソン11のR457Hのミスセンス変異が多い。

■症状
 PORの障害程度によって様々な症状を呈する。

 胎盤におけるP450arom活性の低下のため、アンドロゲン過剰に陥り母親の妊娠中期からの男性化がおこる。また女児においてはこのアンドロゲン過剰により陰核肥大、陰唇の癒合などの外陰部の男性化が起こる。逆に男児の場合は17-水酸化酵素の活性低下のため、完全な男性型の外性器を形成するに十分なアンドロゲンが産生されず、小陰茎、尿道下裂、停留睾丸になる。

 21-水酸化酵素の活性低下により、新生児マススクリーニングにて血清17-hydroxyprogesterone(17-OHP)の高値が指摘される。さらに一部の症例では21-水酸化酵素の活性低下により、コルチゾールの分泌不全がおこり、副腎不全に陥ることも報告されている。

 17-水酸化酵素の活性低下、アロマターゼーの活性低下はエストロゲン欠乏を起こし、女性患者での原発性無月経、乳房発育不全など二次性徴の欠落をきたす。また男児においても17-水酸化酵素の活性低下のためテストステロンが産生されず、二次性徴の進行は起こらないことが多い。

 骨の合併症として頭蓋骨癒合症、顔面低形成、橈骨上腕骨癒合症、大腿骨の彎曲、関節拘縮、くも状指などがある。このような骨合併症をほとんど認めない症例も報告されている。

■治療
 女性、ならびに男性患者の外陰部の異常については形成外科的手術を行う。グルココルチコイドの補充方法、量については各症例によって異なると考えられる。突然死の報告もあるので、ストレス時のグルココルチコイドの補充は徹底すべきである。

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情報提供者
研究班名 内分泌系疾患調査研究班(副腎ホルモン産生異常)
情報見直し日 平成20年4月28日

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