難病(特定疾患)と生活保護・社会保障を考える【携帯/モバイル版】
この場を借りて、難病(特定疾患)と生活保護などの社会保障制度について考えてみたいと思います。
ベーチェット病/認定基準(公費負担)
特定疾患情報・診断・治療方針
1.ベーチェット病
1 主要項目
(1) 主症状
@ 口腔粘膜の再発性アフタ性潰瘍
A 皮膚症状
(a) 結節性紅斑様皮疹
(b) 皮下の血栓性静脈炎
(c) 毛嚢炎様皮疹,痤瘡様皮疹
参考所見:皮膚の被刺激性亢進
B 眼症状
(a) 虹彩毛様体炎
(b) 網膜ぶどう膜炎(網脈絡膜炎)
(c) 以下の所見があれば(a)(b)に準じる
(a)(b)を経過したと思われる虹彩後癒着,水晶体上色素沈着,網脈絡膜萎縮,
視神経萎縮,併発白内障,続発緑内障,眼球癆
C 外陰部潰瘍
(2) 副症状
@ 変形や硬直を伴わない関節炎
A 副睾丸炎
B 回盲部潰瘍で代表される消化器病変
C 血管病変
D 中等度以上の中枢神経病変
(3) 病型診断の基準
@ 完全型
経過中に4 主症状が出現したもの
A 不全型
(a) 経過中に3 主症状,あるいは2 主症状と2 副症状が出現したもの
(b) 経過中に定型的眼症状とその他の1 主症状,あるいは2 副症状が出現したもの
B 疑い
主症状の一部が出現するが,不全型の条件を満たさないもの,及び定型的な副症状が反復あるいは増悪するもの
C 特殊病変
(a) 腸管(型)ベーチェット病―腹痛,潜血反応の有無を確認する。
(b) 血管(型)ベーチェット病―大動脈,小動脈,大小静脈障害の別を確認する。
(c) 神経(型)ベーチェット病―頭痛,麻痺,脳脊髄症型,精神症状などの有無を
確認する。
2 検査所見
参考となる検査所見(必須ではない)
(1) 皮膚の針反応の陰・陽性
20〜22G の比較的太い注射針を用いること
(2) レンサ球菌ワクチンによるプリックテストの陰・陽性
レンサ球菌に対する過敏反応
ベーチェット病の患者の多くはStreptcoccus sanguis をはじめとする口腔内レンサ球菌に強い過敏反応を示すことから,レンサ球菌死菌抗原によるプリックテスト(細いツ判用,26G 針)で20〜24時間後に強い紅斑反応としてみることができる。
(3) 炎症反応
赤沈値の亢進,血清CRP の陽性化,末梢血白血球数の増加,補体価の上昇
(4) HLA-B51(B5)の陽性(約60%)
(5) 病理所見
急性期の結節性紅斑様皮疹では中隔性脂肪組織炎で浸潤細胞は多核白血球と単核球の浸潤による。初期に多核球が多いが、単核球の浸潤が中心で,いわゆるリンパ球性血管炎の像をとる。全身的血管炎の可能性を示唆する壊死性血管炎を伴うこともあるので,その有無をみる。
3 参考事項
(1) 主症状,副症状とも,非典型例は取り上げない。
(2) 皮膚症状の(a)(b)(c)はいずれでも多発すれば1 項目でもよく,眼症状も(a)(b)どちらでもよい。
(3) 眼症状について
虹彩毛様体炎,網膜ぶどう膜炎を経過したことが確実である虹彩後癒着,水晶体上色素沈着,網脈絡膜萎縮,視神経萎縮,併発白内障,続発緑内障,眼球癆は主症状として取り上げてよいが,病変の由来が不確実であれば参考所見とする。
(4) 副症状について
副症状には鑑別すべき対象疾患が非常に多いことに留意せねばならない(鑑別診断の項参照)。鑑別診断が不十分な場合は参考所見とする。
(5) 炎症反応の全くないものは,ベーチェット病として疑わしい。また,ベーチェット病では補体価の高値を伴うことが多いが,γグロブリンの著しい増量や,自己抗体陽性は,むしろ膠原病などを疑う。
(6) 主要鑑別対象疾患
(a) 粘膜,皮膚,眼を侵す疾患
多型滲出性紅斑,急性薬物中毒,Reiter 病
(b) ベーチェット病の主症状の1つをもつ疾患
口腔粘膜症状:慢性再発性アフタ症,Lipschutz 陰部潰瘍
皮膚症状 :化膿性毛嚢炎,尋常性痤瘡,結節性紅斑,遊走性血栓性静脈炎,単
発性血栓性静脈炎,Sweet 病
眼症状 :転移性眼内炎,敗血症性網膜炎,レプトスピローシス,サルコイド
ーシス,強直性脊椎炎,中心性網膜炎,青年再発性網膜硝子体出血,
網膜静脈血栓症
(c) ベーチェット病の主症状および副症状とまぎらわしい疾患
口腔粘膜症状:ヘルペス口唇・口内炎(単純ヘルペスウイルス1 型感染症)
外陰部潰瘍 :単純ヘルペスウイルス2 型感染症
結節性紅斑様皮疹:結節性紅斑,バザン硬結性紅斑,サルコイドーシス,Sweet 病
関節炎症状 :関節リウマチ,全身性エリテマトーデス,強皮症などの膠原病,痛
風,乾癬性関節症
消化器症状 :急性虫垂炎,Crohn 病,潰瘍性大腸炎,急性・慢性膵炎
副睾丸炎 :結核
血管系症状 :高安動脈炎,Buerger 病,動脈硬化性動脈瘤,深部静脈血栓症
中枢神経症状:感染症・アレルギー性の髄膜・脳・脊髄炎,全身性エリテマトーデ
ス,脳・脊髄の腫瘍,血管障害,梅毒,多発性硬化症,精神疾患,
サルコイドーシス
表1: ベーチェット病の活動期分類
1.活動期
ぶどう膜炎,皮下血栓性静脈炎,結節性紅斑様被疹,外陰部潰瘍(女性の性周期に連動したものは除く),関節炎症状,腸管潰瘍,進行性の中枢神経病変,進行性の血管病変,副睾丸炎のいずれかが認められ,理学所見(眼科的診察所見を含む)あるいは検査所見(血清CRP,髄液所見,腸管内視鏡所見など)から炎症兆候が明らかなもの。
口腔内アフタ性潰瘍,皮膚・外陰部潰瘍および眼症状については,それぞれ下記のscore 2 以上を示す場合を活動期ベーチェット病とする。
2.非活動期
活動期の定義に当てはまらないもの。
(注1)活動期には一般に治療薬剤の増量,変更,追加が必要となる。
(注2)口腔粘膜のアフタ性潰瘍,毛嚢炎様皮疹のみの症状の場合は活動性判定のよりどころになりにくいので,その他の症状あるいは既往症状を考慮して慎重に判定することが望ましい。
(注3)ぶどう膜炎のように症状発作の明らかなものでは,活動期は発作時に一致し,その持続は一般に2 週間以内である。ただし,2 週間以上経っても明らかな炎症所見が客観的に認められれば活動期と考えられる。
(注4)非活動期であっても,活動期への移行が突発的に起こりうるので,注意が必要である。
(注5)非活動期で,1 年間以上活動指数score 0 が続いた場合を固定期(寛解)とする。
3.活動指数
(1)口腔内アフタ性潰瘍 |
score 0: | なし |
score 1: | 最近の4 週のうち症状が存在したのは2 週未満である。 |
score 2: | 最近の4 週のうち症状が存在したのは2 週以上である。 |
score 3: | 最近の4 週のうちほとんどに症状が存在した。 |
(2)皮膚(結節性紅斑様皮疹)・外陰部潰瘍 |
score 0: | なし |
score 1: | 最近の4 週のうち症状が存在したのは2 週未満である。 |
score 2: | 最近の4 週のうち症状が存在したのは2 週以上である。 |
score 3: | 最近の4 週のうちほとんどに症状が存在した。 |
(3)眼症状(ぶどう膜炎) |
score 0: | なし |
score 1: | 最近の4 週のうち1 回の眼発作(数日以内に連続して起こった対側眼の炎症を含む)があった。 |
score 2: | 最近の4 週に2 回の発作があった。 |
score 3: | 最近の4 週に3 回の発作があった。 |
(4)その他の症状 |
@ | 関節炎症状:関節痛,腫脹の有無,歩行困難,変形の出現など |
A | 消化器病変:急性・慢性腹痛,下血または潜血反応 |
B | 副睾丸炎:疼痛,腫脹の有無 |
C | 血管系病変:心大動脈障害,中血管閉塞,小血管閉塞,血栓性静脈炎など |
D | 中枢神経病変:頭痛,めまい,四肢麻痺,精神症状など |
E | その他の症状と合併症 |
表2:ベーチェット病の重症度基準 |
Stage | 内 容 |
T | 眼症状以外の主症状(口腔粘膜のアフタ性潰瘍,皮膚症状,外陰部潰瘍)のみられるもの |
U | Stage Tの症状に眼症状として虹彩毛様体炎が加わったもの
Stage Tの症状に関節炎や副睾丸炎が加わったもの |
V | 網脈絡膜炎がみられるもの |
W | 失明の可能性があるか,失明に至った網脈絡膜炎およびその他の眼合併症を有するもの
活動性,ないし重度の後遺症を残す特殊病型(腸管ベーチェット病,
血管ベーチェット病,神経ベーチェット病)である |
X | 生命予後に危険のある特殊病型ベーチェット病である
中等度以上の知能低下を有す進行性神経ベーチェット病である |
Y | 死亡(a. ベーチェット病の症状に基づく原因 b.合併症によるものなど,原因を記載すること) |
注 | 1 StageT・Uについては活動期(下記参照)病変が1年間以上みられなければ,固定期(寛解)と判定するが,判定基準に合わなくなった場合には固定期からはずす。 |
| 2 失明とは,両眼の視力の和が0.12 以下もしくは両眼の視野がそれぞれ10 度以内のものをいう。 |
| 3 ぶどう膜炎,皮下血栓性静脈炎,結節性紅斑様皮疹,外陰部潰瘍(女性の性周期に連動したものは除く),関節炎症状,腸管潰瘍,進行性の中枢神経病変,進行性の血管病変,副睾丸炎のいずれかがみられ,理学所見(眼科的診察所見を含む)あるいは検査所見(血清CRP,血清補体価,髄液所見,腸管内視鏡所見など)から炎症兆候が明らかなもの。 |
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