機動戦艦ミネルバ/第六章 新造戦艦サーフェイス

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 鳥が飛び交い獣が駆けるジャングルの中、実戦訓練が繰り広げられている。  ペイント弾が装填された火砲を携えて、慎重に狙撃相手を探す者がいた。  操縦桿を握りモニターを見つめ、外の気配に耳を澄ますアイクがいた。  右手方向からガサゴソと音が聞こえた。 「そこか!」  身を構えて火砲を放つアイク。  相手は素早く身をかわして木陰に隠れた。 「遅いんだよ。アイク」  ジャンであった。  身を翻して反撃してくる。  アイクとジャンの操縦能力は、ほぼ互角のようであった。  そのような戦闘状況は、ミネルバの艦橋でもモニターしていた。 「あの二人、なかなかやるじゃないですか。反射速度は並じゃないです。士官学校ではし ょっちゅうサボっていたらしいですが」 「外見からだけでは判りませんからね。ランドール提督が、その良い例です」 「ああ、噂は聞いていますよ。艦長は提督の後輩でしたね」 「まあね……いろいろと、その人となりを見せ付けられました」  そんな会話の間にも、二人の戦闘は続いている。  アイクとジャン以外にも実戦訓練に参加している訓練生は多数いた。  燃料切れを報告してくる機体が出始めていた。 「意外と早かったですね。もうしばらく動けるはずですが」 「まだまだ未熟だからでしょう。実戦投入はまだ無理ですね」  頃合い良しとみて、 「訓練は終了。全機帰投させてください」 「了解しました。全機帰投させます」  ミネルバ艦橋で、ナイジェル中尉とオーガス曹長が、フランソワ艦長に訓練状況の報告 をしている。 「今後も怠りなく、艦内での訓練を続けてください」 「了解!」 「以上です。下がって結構です」  踵をカッと合わせ、敬礼して退室するナイジェル中尉とオーガス曹長。  廊下を歩きながら話し合う二人。 「今回の訓練では、例の二人が結構良い動きをしていましたね」 「ああ、意外だった。この分だと、実戦投入一番乗りになるだろう」  突然、警報が鳴り響いた。 『敵機来襲!総員戦闘配備!!』 「訓練生を回収した後で良かったですね」 「そうだな。急ぐぞ、出撃だ!」 「はい!」  言うが早いか、発着場へと駆け出す二人。  既に戦闘機編隊は、飛び立った後だった。 「整備は済んでいるか?」  整備士に確認するナイジェル中尉。 「はい。燃料、弾薬とも満載です」 「結構!行くぞオーガス」 「あいよ」  それぞれの分担に分かれて機体を動かす二人。  艦橋。 「ザンジバル級が五隻接近中!」  レーダー手の報告に、副長が応答する。 「相手にとって不足はありませんね。前回のように弾薬が尽きるということもないし」 「油断は禁物ですよ」 「はい!」  戦闘が始まる。  しかしながら、五隻くらいのザンジバル級では、機動戦艦ミネルバの敵ではなかった。  とは言え、損傷をまったく受けないというわけにはいかなかった。  未熟兵が多く、戦闘には不慣れだったからだ。辛うじてミネルバの機動力で何とか凌い だという状況だった。 「もう一度ジャングルへ降りて艦体を隠しながら修理を急ぎましょう」  修理には、パイロット候補生は訓練を終えたばかりで疲れているだろうと、その他の訓 練生が任務に当たることになった」  艦橋で、その様子を見ながらベンソン中尉がため息をもらす。 「将来的にいつまで、このような状況が続くのでしょうか?」 「最終的には、ランドール提督の反攻作戦が開始されて、このトランターへの降下作戦に 至った段階ですね。それまで、我々は内地に留まって戦い続けるだけです」 「致し方ありませんね」  反攻作戦がいつから始まり、いつ終わるのか、誰にも予想がつかない。ただ言えるのは ランドール提督次第というだけである。 「それにしても、レイチェル・ウィング大佐殿は、どこで何をしてらっしゃるのでしょう か?」 「秘密の海底基地があるそうなので、そこで各地に散らばっている仲間への指示・命令を 出しておられるのでしょう」 「海底基地ですか……。そのようなものをいつの間に築き上げたのですかね」 「メビウスは占領機甲部隊ですから、優秀な工作兵も揃っています。秘密裏に作業を進め ることも可能でしょう」 「一度訪ねてみたいですね」 「そのうち実現するでしょう」 「期待しています」
     
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