機動戦艦ミネルバ/第五章 ターラント基地攻略戦
X 「総員帰還しました」 「司令本部より暗号通信入電!」 「解読してください」 「ただ今解読中です」  やがて解読されて報告される。 『ターラント基地を攻略し、撤退命令あるまで確保せよ』  その指令に、げんなりという表情をする副官。 「まともな休息もありませんね。次から次へと命令が届けられます」 「仕方ありません、我々の任務は陽動です。総督軍の只中にいるのですから。それより回 収したモビルスーツを使って、パイロット候補生の訓練を始めてください」 「了解しました」  というわけで、パイロット候補生の訓練が開始された。  発着格納庫で、ナイジェル中尉が、候補生を前に訓示を垂れる。 「パイロットになるための訓練はきびしい。志願した君達には十分な訓練を積んで、立派 な戦士となってもらいたい。幸いにも搾取したモビルスーツを持って、訓練の機会が増え たのは喜ばしいことだ。今から読み上げる者から順に機体に搭乗しろ。呼ばれなかった者 は次の順番とするが、訓練を見学しつつ仲間の動きを観察して研究しろ」  名前を順番に読み上げるナイジェル中尉。  その頃、病室に入れられている三人。  サブリナ中尉が面会に来ていたのはアイクとジャンのいる病室。  サリーは、まだ回復せず別室となっていた。  サブリナを見つけて、中の一人が駆け寄ってきた。 「いい加減に出してくれよ!」  隔てられた窓ガラス越しに懇願するのはアイクだった。 「いいだろう。三日間の休息を与えた後に、仲間と共に訓練をはじめる」 「訓練か……それは、いやだなあ」 「何を言っておるか。強制召集されて軍に入ったんじゃなくて、志願したんだろ?」 「まさか、トリスタニア共和国が滅亡するとは、思ってもみなかったもんでね。後方部隊 でのほほんとしていながら、給料を貰って楽しみたかったよ」  呆れ返るサブリナ中尉。 「甘ったれたことを言うんじゃない。艦長は君達の将来を、いつも考えて戦っているの だ」 「そういえば、まだ艦長さんにはお目見えしていないな」 「そのうちに会えるさ。ともかく三日間の休息だ。十分に身体を養生しておけ」 「へいへい。ところでサリーはどうしている。見えないが……」 「まだ集中治療室だ。起き上がれるまでには回復しているがな」 「それは良かった」  突然、サイレンが鳴り響いた。 「なんだ?」 「ターラント基地の攻略戦が始まるのさ」 「ターラントって結構大きな基地じゃないか。大丈夫なのか?」 「五隻の応援部隊が駆けつけている。このこの機動戦艦ミネルバと合わせて、艦長なら何 とかするさ」
     
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