あっと! ヴィーナス!!(41)
ハーデース編 partー6 「いやあ、間違えた……今のは、ダンジョン脱出呪文だった」 「馬鹿野郎!やっぱりドラクエじゃないかあ!!」  気を取り直して、再び洞窟内へと突き進む。  なんだかんだと先へ進み、荘厳なる扉の前にたどり着いた。 「ふむ。また合言葉か?」 「いや違うな。ほら、そこにドアノッカーがあるぞ」  指さすドアの先には、獣の彫り物と口に挟むようにリング状のノッカーが付いて いた。 「ほう……古風だな。これでドアを叩けば、ドアを開けてくれるのかな?」  というと、ドアノッカーを叩いた。 「ま、待て!早まるな!!」  重厚な軋み音を立てながら扉が開いてゆく。  そして現れたのは、三つ首にして竜の尾と蛇の鬣(たてがみ)を持った巨大な獅 子であった。 「ケルベロスだわ!」 「ケルベロス?」 「地獄の門番よ。早い話が、ハーデースのペットというところね」 「そうか。ラスボスに至る前の中ボスというところか?こいつを倒さないと先には 進めないというわけだな」 「竪琴の名手オルペウスがいれば、こいつを眠らせておけるのだけど……」 「無理だ。オルペウスはアポロンの子飼いだからな」  二人の女神が悩んでいると、 「ほれ、パン食うか?」  弘美が、持っていたパンを差し出した。  尻尾を振りながら、そのパンに噛り付くケルベロス。 「おまえ、パンを持ってきていたのか?」 「まあな。長旅になりそうだったから、持ってきた。女神はどうだか知らんが、人 間は腹が減るからな」 「意外だな。賄賂のことを『ケルベロスにパンを与える』という諺(ことわざ)が あるのを知っていたのか?」 「知るかよ。たまたまだよ」 「とにかく、ケルベロスがパンに気を取られているうちに、通り抜けるぞ!」  地獄の門番をクリアーして、さらに先に進む。 「ケルベロスがいたということは、すでに地獄に入ったということだろ?」 「地獄というよりも冥府というべきだが。まあ、その通りだ」  さらに進むこと1時間くらいだろうか、目の前に再び大きな扉が現れた。 「扉というよりも門、城門だなこりゃ」 「心配するな。ハーデースの神殿に到達したのだ」 「本当か?適当に言ってるんじゃないだろな?城門開けたら日本のどこかの城だっ たりしてな」 「それはないぞ」 「じゃあ、開けて入ろうぜ……ってか、どうやったら開くのか?鍵穴とか何もな い?」 「また合言葉じゃないのか?」  しばらく考え込んでいた弘美だったが。 「頼もう!相沢弘美ここに参上つかまつった!!」  大声で扉に向かって叫ぶ弘美。  すると……。 「とおれ!」  図太い声とともに、扉がゆっくりと開いた。 「ふむ。どうやら歓迎されているようだな」 「どうだかな。それなら、合言葉が必要な扉とかは必要ないだろ?素直に通してな いじゃないか」  門をくぐると、辺りの風景が一変した。  おどろおどろしたダンジョンの景色から、どこかの神殿造りのような大広間が一 行を出迎えた。  磨き上げられた大理石の床に、エンタシス状の柱が立ち並ぶ緋色の絨毯の敷かれ た通路。 「この柱を壊したら、天井が崩れ落ちるのかな?」 「ありうるだろうな」 「万が一のために、柱に爆薬でも仕掛けておくか?」 「構わんが、その爆薬はどこにあるんだ?」 「持ってきてないのかよ」 「あたりまえだ!第一だな、柱を爆発して天井が崩落したら、生き埋めになるじゃ ないか」
     
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