あっと! ヴィーナス!!(39)
ハーデース編 part-4  日本から一瞬にして、イタリアのローマへとやってきた一行だった。 「ここから、Google Map の経路ナビを使うんだな」 「その通り」  スマホのナビゲーションを起動する弘美。  マップ上に目的地までの経路が示されている。 「目的地まで、徒歩67分(5.3km)と出ているな。もっと近くに寄れなかったのかよ」 「日本からローマまで飛んだんだ。十分誤差の範囲だと思うぞ」 「まあいいや。観光のつもりでのんびり行くか」 「愛ちゃんが囚われているのに余裕だな」 「奴らの欲しいのは俺自身とファイルーZなんだろ?」 「まあそうだろな」 「だったら、愛ちゃんに手を出すことはないさ」 「本当にそう思うのか?身代金誘拐の多くで殺人となっているぞ」 「それは人間界の話だろ?神にも威厳というものがあるだろう?インディアン嘘つ かない、とか良く言ってたじゃないか」 「そ、それはまあそうだが……」  なんだかんだ言っているうちに、経路ナビの終点にたどり着いた。  目の前には、蝙蝠が出入りする薄暗い洞窟があった。 「どうやら、この洞窟の中が目的地のようだな」  慎重に洞窟に入る一行。 「真っ暗だな。おい、光の呪文とかないのか?レミーラとか」 「レミーラとはなんだ?」 「レミーラも知らないのかよ。ドラクエ通ならすぐ分かるぞ」 「ゲームの話をしているのか?」 「他にないだろ?とにかく光だ!」 「ふむ。まあいい!光あれ!!」  ディアナが訴えると、辺り一面が明るくなった。 「さすが、神だな」 「当たり前だのクラッカーだ!」 「てなもんや三度笠かよ」 「そうそう。『俺がこんなに強いのも〜』って、懐からクラッカー出して掲げるの よね」 「それ、古すぎるぞ。神夜映画劇場って、一体何年代のものやってるんだ?」 「さあな。地上の時間のことは、天上界では分らんのでな」  などと話していると……。 「魔物が現れた!ゾンビが3匹。魔物の先制攻撃!弘美に30Pのダメージを与えた」 「ちょっと待て!いつからドラクエになったんだよ。ってか、なんでヴィーナスの おまえがナレーションやってんだよ」 「暇だったからよ。はい!王者の剣あげるから、軽く倒してよ。剣道の達人でしょ」 「ドラクエの武器かよ。ってか、俺は柔道だぞ!剣道はやってない!!」 「あらそうだったけかしら?」 「しようがねえなあ……」  といいながらも、王者の剣で一刀両断でゾンビを倒す。 「チャリラリラン♪弘美はレベルが上がった……」 「もういいよ」 「さすが、ゲームをやり込んでいるみたいね。あっさりと倒しちゃったわね」 「うるせえ!勝手に抜かしてろ!!」  暗闇の洞窟を突き進む弘美達。  やがて頑丈そうな岩が道を塞いだ。 「行き止まりだぞ。どうやって先に進むんだ?」 「こういう時は、合言葉じゃないの?確か、神夜映画劇場でやってた……盗賊達が 大きな岩の前で唱えるのよ」 「それって、アリババと四十人の盗賊か?『開け、ゴマ!』ってやつ」 「ああ、それよ!その言葉『開け、ゴマ!』よ」  すると、ヴィーナスの声に反応して、岩が軋み音を立てて横にずれて道が開いた。 「おお!」  あまりの拍子抜けな事に、顔を見合わせる一同だった。
     
↓ 1日1回、クリックして頂ければ励みになります(*^^)v
小説・詩ランキング

11