あっと! ヴィーナス!!第二部
第三章 part-5  その頃、 「バルス!」  エンジェルが最後のボタンを押した。  けたたましく鳴る警報音とともに、城内アナウンスが流れた。 「まもなく城は崩壊します。ただちに城外に退避してください」  と同時に、コントロールルームが激しく振動した。 「な、なに?」  慌てて飛び上がって、制御盤から離れる。  何事かとしばらく様子を見ていたが、床や壁が次々と崩壊していく。 「城が壊れてゆくわ」  ディアナに報告しなきゃと、その場を離れた。  天井が崩れて落下してくるのを避けながら急ぐエンジェル。  もし飛翔能力がなければ、真っ逆さまに落下していただろう。  アポロンのいる玉座付近でも騒動が起きていた。 「何事!」  城全体が振動を初めて、壁や天井が崩れてゆく。  そして足元の床も、ついに崩れ始めた。  動揺するヴィーナス達。 「城が崩れる!」  そこへエンジェルが駆けつけて、実情をディアナに報告する。 「城から離れないと」  天駆ける戦車を呼び寄せるディアナ。 「弘美は?」  心配になったディアナが見たものは、バリアーの中で平然としているアポロンと茫然自 失のままの弘美だった。  天空城が崩壊する中、バリアーは完全防御状態で、その中は安全地帯となっていた。  天空城は崩れ去った。  しかし、アポロンのいるバリアーは球体状となって浮かんでいた。  玉座に座ったアポロン、取り巻きの神子、そして愛も弘美も無事息災であった。  球体の周りを飛び回る、天駆ける戦車に乗ったディアナとヴィーナス。 「なんてことだ」  上へ上へと昇ってゆく球体を追いかけながら、自分達の浅はかさに悔しがる女神。  アポロンの深層意識までは読みきれなかったという。 「アポロンの行き先は、判っている」 「ヘラ様のところね」 「その通りだ」  ヘラのいるところ、天上界へと向かう女神だった。
     
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