静香の一日

(三)着替え  その時、廊下にある柱時計が時を告げた。 「ありゃあ、もうこんな時間か!」  俊彦との待ち合わせの時間だった。 「完璧に遅刻じゃないか」  俊彦はプロポーズするために待ち合わせいるんだった。  来るまで一日中でも待つつもりだ。  と、言っていたはずだ。  床に横たわる静香(自分)に目をやる。  俊彦と静香を結ばせてやりたい。  ずっと思っていた。  もしかしたらいい機会ではないだろうか。  今、自分は静香になっている。  この身体で俊彦と会い、縁談を成就やろう。  そうと決まれば、出かける用意である。 「まずは着替えだな……」  静香の部屋に入って、タンスをあさってみる。 「一体何を着ていけばいいんだろう」  こんな時、静香というか若い女性というものは、どんな服を身に着けるものだろう か。  しかし……。こんなに下着を持っているなんてな。女はみんなそうなのだろうか。 「と、眺めている場合じゃないな」  どうせならセクシーなやつがいいだろう。  俊彦とは無二の親友で、性格も良く知っている。  あいつなら静香を裏切ることはないし……、この際だ。  最後の一線を越えちゃうのもいいだろう。  その気にさせるにも魅惑的な下着にしよう。 「やっぱり悩殺下着となれば、ガーターベルト! に決まりだろうな」  引き出しの中からガーターベルトとそれに見合う下着を探す。 「あった。なんだ、お揃いの下着があるじゃないか」  さっそくそれを着ることにする。 「何というか、ブラジャーだけど、着るには後ろ手で見えないし、女は背中によく手 が届くものだ……」  しかし、はじめて着けるはずなのに、意外にも簡単に着けることができた。  この身体は静香のものだし、毎日着けているので慣れというか、身体が動きを覚え ているようだ。  ブラジャーを着けてショーツを履いて、ガーターベルトにストッキング……。 「よし。下着はこれで完璧だな」  改めて姿見に映してみる。
     
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