特務刑事レディー・特別編
(続・響子そして)

(終章)そして磯部健児  数年の時が過ぎ去った。  特務捜査課の捜査員として、優秀なるパートナーである敬と共に、数々の麻薬・銃 器密売組織や人身売買組織の壊滅という業績を上げて、わたし達の所属する課も警察 庁の中でも確固たる地位を築き上げていた。  相変わらずとして、若い女性と言う事で尾行や張り込みといった捜査には出しては くれないものの、女性にしか携わることのできない事件には、囮捜査官として派遣さ れることは少なくなかった。  基本的に週休二日制をきっちりと取れることは、制服組女性警察官と同等であると 言えた。  五日の勤務のうち一日は、麻薬取締官として目黒庁舎に赴くことになっている。  その一方で例の響子さんは、黒沢先生の製薬会社の名受付嬢として新たなる生活を はじめていた。  性転換によって女性となったことによる戸籍の性別・氏名変更も滞りなく完了。  倉本里美、渡部由香里という新たなる仲間も増えて、張りのある楽しい人生を謳歌 していた。  闇の世界にも顔が利く黒沢先生のおかげで、彼女達は平穏無事に暮らしている。  そのうちに黒沢先生自身も性転換薬飲んで、女性になってしまうし……。  あれには本当に驚かされた。  まさかあんなに若くてきれいなお嬢さんに生まれ変わるなんてね。  今は、医学部に通う、若干二十歳の女子大生なのよ……。  もう……。きゃぴるんの女の子をエンジョイしている。  話がそれたわね。  そんなこんなで、もう心配することもないだろうと考えていた矢先だった。  黒沢……。  いえ、最近は英子さんと呼んでいる。  先生と呼ぶにはおこがましいし、何と言っても年下だし。  あ、製薬会社の副社長も兼ねているのよ。  会社の株式の五十パーセント握ってるらしい。  その英子さんから、副社長室に呼ばれた。  そこには、見知らぬ老人が同席していた。 「紹介しましょう。磯部京一郎さんよ」  磯部? 「まさか、響子さんの?」 「祖父の磯部京一郎です」  と、深々と礼をされた。 「あ、斉藤真樹です」  あわてて、こちらもぺこりと頭を下げる。 「真樹さんは、麻薬取締官とお伺い致しました」  突然、わたしの職業に言及された。 「はい。その通りです」 「実は、甥の磯部健児についてご相談がございまして」  その名前を耳にして、わたしは全身が震えるような錯覚を覚えた。