特務刑事レディー・特別編
(続・響子そして)

(一)序章  厚生省麻薬取締部と警察庁生活安全局、そして財務省税関とが合同して、警察庁の 内部に特別に設立された特務捜査課の二人。麻薬と銃器密売や売春組織を取り締まる エージェント。  それが沢渡敬と斎藤真樹だ。  つい先日磯部健児の件をやっとこさ決着させて一安心の敬と真樹。  二人が捜査に手をこまねいている間に、その人生を狂わせてしまった磯部響子のこ とも無事に解決した。  気を落ち着ける時間がやっと巡ってきて、安らかなひととき。 「ねえ……。しようよ」  真樹が甘えた声で、ブラとショーツ姿で敬の身体を揺する。  事件を解決した後はいつもそうだ。緊張から解き放されて興奮した心身を静めるた めには一番いい方法……なんだそうだ。 「なんだ。またかよ」 「いいじゃない」 「俺は疲れてる」  くるりと背を向けて不貞寝を決め込もうとする。 「お願いだよ。このままじゃ、眠れないよ」  といいつつ敬の身体の上にのしかかっていく。 「一人で慰めてろよ」 「そんな冷たいこと言わないでよ。ねえ……」 「もう……しようがないやつだなあ」 「今日は安全日だから……」  真樹が言わんとすることを理解する敬。  しかしできたらできたで、それはそれで構わないと思う敬だった。  結婚し子供を産み育てる平和な生活。  真樹にはその方がいいのかも知れない。  磯部響子の事件に関わるうちに、女の幸せとは何かを考えるようになった。  斎藤真樹……。  その身分は本当のものではない。とある事件にて脳死状態となったその女性のすべ てを彼女に移植されて生まれ変わった……。かつて佐伯薫と名乗っていた性同一性障 害者で女性の心を持っていた男性。  それが今日の斎藤真樹だ。  せっかく命を宿し産み出す能力を授かったのだ。  命を与えてくれた、その女性のためにも、どうあるべきか……。考える余地もない だろう。  斎藤真樹と佐伯薫。  名前や戸籍は違うものの正真正銘の同一人物だ。だがすでに佐伯薫という人物は死 んだことになっている。  あのニューヨークにおいて……。