第十一章・共同戦線
Ⅱ 軽巡洋艦スヴェトラーナ  精神感応(テレパス)=族長ドミトリー・シェコチヒン  念動力(サイコキネシス)=ローベルト・ポルーニン  遠隔念動力(テレキネシス)=チムール・オサトチフ  瞬間移動(テレポート)=エヴゲニー・ドラガノフ  精神治癒(サイコセラピー)=アンナ・ネムツォヴァ 高速戦艦サラマンダー  指揮官 =ウォーレス・トゥイガー少佐  副官  =ジェレミー・ジョンソン准尉  航海長  =ラインホルト・シュレッター中尉  言語学者=クリスティン・ラザフォード  ミュー族=エカテリーナ・メニシコヴァ  数時間後、全参謀が揃って会議が始められた。  トゥイガー少佐が開口一番、事情を知らない者にとっては突拍子もない発言をす る。 「ここにおられるのが、ミュータント族の長であるドミトリー・シェコチヒンだ。 そのなんだ……色々とあったが、これからミュー族と共闘して、アルビオン軍を蹴 散らしてクラスノダールを取り戻す」 「共闘ですって?」  これまで三度も戦ってきた相手と共闘するなどと、思いもよらない事態であった。 「彼は、テレパスで君達が何を感じて何を思っているかは、手に取るように分かる らしい。ゆえに嘘偽りは一切通じない」  旗艦艦橋勤務の者とダグラス・ニックス大尉以外は、信じられないという表情を していた。 「私を信じて、彼のことも信じて欲しい」  得体のしれない連中はともかくも、信頼する上官から信じてくれと言われれば、 信じるしかないだろう。 「分かりました。少佐殿を信じます、なのでそちらの方も信じることにします」  一同、頷いて反対する者はいなかった。  少佐に絶大なる信頼を抱いているようだった。 「ありがとう」  賛同も得られたことで、シェコチヒンを交えての作戦会議が行われた。  テレパスのシェコチヒンにしてみれば、以心伝心で作戦を伝えることができるの であるが、一般人のサラマンダーの人々には声を出し、図面を指し示しながらでな いと意思が通らない。  会議を終えて、軽巡洋艦に戻ったシェコチヒン。 「お疲れさまでした」 『ああ、疲れたな。アンナ、頼むよ。いや、ドラガノフを先に癒してくれ』 「分かりました」  精神治癒能力のあるアンナ・ネムツォヴァが、椅子に座ったドラガノフに背後か ら近寄って、彼の耳元から目隠しするように両手で覆う。 「目を閉じてください」 「分かった」  ドラガノフが言われた通りにすると、静かに瞑想するアンナ。  彼女の精神治癒は、三日三晩不眠不休で働いて精神クタクタに疲れた脳を、すっ きり爽やか気分にさせることができる。但し、肉体的疲労は癒すことはできない。  治療が終わって、一同に作戦を伝えるシェコチヒン。  テレパスの彼にとっては、一同に集まって会議などする必要はない。  能力者のいない随伴艦の乗員達には、精神波増幅装置によって伝えることができ る。  数時間後、併進する軽巡洋艦スヴェトラーナと高速戦艦サラマンダー。  それを取り囲むように、両国の艦隊が展開して突き進む。  サラマンダー艦橋。 「まさか、戦い合った国家と共闘することになるとは、思いもしませんでしたよ」  副官ジョンソン准尉が、感慨深げに言った。 「かと思うと、紳士的な国家と思っていた奴が、簡単に寝返ったからな」 「通常人には、相手の腹の中までは探ることはできませんからね」 「ともかく、今回の共闘作戦の指揮官は自分が執る。彼らはサボート役に回ること になっている」 「しかし、このサラマンダーはさんざんやられて、原子レーザー砲しか使えません よ」 「まあ、やりようはいくらでもあるさ」  アルビオン軍艦隊は、側方に砲を並べた戦列艦で射程も短い。  原子レーザー砲で遠距離射撃だけでも、艦隊を粉砕できるだろう。 「まもなくクラスノダールに到着します」  航海長ラインホルト・シュレッター中尉が報告する。 「戦闘配備せよ! 族長にも連絡を入れてくれ」  トゥイガー少佐が下令すると、ジョンソン准尉が復唱する。 「全艦、戦闘配備! ミュー族に打電」  オペレーターが全艦に打電する。 「総員配置に着け!」  一方のミュー族の方も戦闘態勢に入っていた。
     
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