第六章・会敵
V  サラマンダー艦橋。 「パルスレーザー砲照射!」  次々と襲い掛かる砲弾を撃ち落とす。 「原子レーザー砲発射準備!」 「原子レーザー砲への回路接続」 「レーザー発振制御超電導コイルに電力供給開始」 「BEC回路に燃料ペレット注入開始します」 「発射準備完了しました」 「撃て!」  一条の閃光が走り、敵艦を捕える。 「命中しました」 「一隻撃沈を確認」 「どう出るかな……。再度、交信を試みてみろ」 「了解」  通信士が試みるものの応答はなかった。 「だめです」 「敵艦、攻撃を続行中!」 「徹底抗戦か……。仕方あるまい、原子レーザー砲第二射準備だ!」  交信を拒絶して、有無を言わさず攻撃を続ける相手。  もはや遠慮は無用であろう。  第二射が発射され、跡形もなく消し去った。 「敵艦消滅しました……」 「前回の遭遇と合わせて、近くに敵の基地があるのではないでしょうか?」 「うむ……ありうるな」 「好戦的な相手の基地を放っておいては、今後も遭遇会戦は避けられません」 「いっそのこと敵基地を奪取してしまいましょう」 「待て、早まるな! 相手が国家なら外交問題にもなる。本国に報告して支持を得 る必要がある」 「外交ですか……。相手に聞く耳があればですけどね」 「ともかく惑星探索は一時中止だ!敵の残骸を集めたら、帰還するぞ!」 「了解しました」  敵の存在の可能性を考慮して、探索を中止して基地へと帰ることにする。  惑星イオリス評議会。  敵がいるかも知れない宙域への探索についての議論を続けていた。 「敵がいるかもというだけで、探索を延期するのはどうかと思う」 「相手は交信を拒絶して問答無用で攻撃を仕掛けてくる輩、遠慮なく叩き潰してし まえば良いじゃないか。相手の基地や惑星を奪取すれば、零から開発する手間も省 ける」 「侵略者になろうというのか?」 「侵略してきたのは奴らの方じゃないか」 「それは違うぞ。彼らは我々の星域には踏み込んでいない。我々の方が彼らの星域 を侵したから排除しようと戦ってきたのだ」 「待て! このイオリスの先住者は、彼らによって滅ぼされたのではないのか?  既に彼らが侵略をしている証拠だ」 「宣戦布告なしに相手が攻撃を仕掛けてくるなら好都合じゃないか。反撃して相手 の基地を攻略するのも可能じゃないか? これまでの戦闘で収集された戦艦の残骸 から、戦艦の技術は遥かに我々の方が進んでいる」 「現実を考えてみようじゃないか。ニュー・トランターは未だ開拓途中だし、イオ リスも居住限界に達しつつある。どうしても次なる居住惑星が必要なのだ。このタ ランチュラ星雲内には居住可能な惑星が少ない。だから星雲外に出て、惑星探しに 出かけなければならないのだ」 「新たなる惑星探しは必要不可欠だ。相手が戦いを仕掛けてくるなら受けて立つだ けだ」  評議会は、好戦国と戦って領土を奪う、という意見が多数であった。  天の川銀河にある時は、何万年にも渡って民族紛争を続け、食糧や領土を奪い奴 隷制度を作った。今更体裁を述べても仕方がないだろう。  主戦派と慎重派が議論を重ね続けて、最終的に侵攻すべきという結論を出した。  評議会の決定を受けて、艦艇の増産が行われて、侵攻作戦部隊が編制された。  イオリス軍参謀本部に呼び出されるトゥイガー少佐。  メレディス中佐が待ち受けていた。 「評議会の決議のことは聞いているだろう?」 「はい。侵攻作戦が開始されると……」 「ああ。その作戦司令官に君が選ばれた」 「なるほど……。お引き受けします」 「評議会の連中は、技術力差から勝ち戦と高をくくっているようだが、技術力や艦 艇数の多さだけで推し量れるものではないのだ」 「確かに。ランドール提督がどのようにして勝ち続けてきたかを考えれば、そんな に簡単なことじゃないです」 「そういうことだな……。しかし、評議会が決定したことには、軍としては逆らえ ない。君には、侵攻作戦部隊司令として、サラマンダーから指揮を執ってくれたま え」 「最初に目指すは、会敵した宙域であるαω星団ですね」 「うむ。よろしく頼む」 「かしこまりました」  敬礼をして部屋を出るトゥイガー少佐だった。
     
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