第六章・会敵
Ⅲ  司令官=ウォーレス・トゥイガー少佐  副官 =ジェレミー・ジョンソン准尉  艦長 =マイケル・ヤンセンス大尉(蘭♂)  通信士=モニカ・ルディーン少尉(瑞♀)  レーダー手=フロランス・ジャッカン少尉(仏♀)  技術主任=ジェフリー・カニンガム中尉(英♂)  言語学者=クリスティン・ラザフォード(英♀)  模擬戦闘も終わって、新たなる任務がトゥイガー少佐に与えられた。  命令を伝えるメレディス中佐。 「模擬戦闘はご苦労様でした」 「いえ、訓練は必要ですからね」 「さて、君にはタランチュラ星雲の隣にある、散開星団に向かう探索隊の護衛任務 を与える」 「居住可能な惑星が見つかったのですか?」 「そういうことだ、行って目で確認しなければ実情は分からない。ともかく制宙権 を確保していない、この星雲の外に出るには護衛が必要だ」 「例の好戦国ですか?」 「そうだ。以前、君が遭遇した相手と出くわす可能性がある。サラマンダーを使っ てくれ」 「本国の防衛に支障がでませんか?」 「大丈夫だ。先の戦闘で得られた不審船の残骸から、交戦国の技術力はまだ我々よ りかなり低いらしい」 「分かりました。探索隊の護衛任務に就きます」 「よろしく頼む」  数日後、探索隊と共に出発するトゥイガー少佐率いる護衛艦隊。  戦艦ビスマルク号と装甲巡洋艦フィルギア号も随伴している。 「少佐殿、今回もご同伴よろしくお願いします」 「またご一緒できて光栄です」  艦長ハーゲン・ネッツァー大尉と艦長ジェラール・プルヴェ大尉が挨拶を交わす。 「恒星VFTS682が見えてきました」 「この辺りは、何でこうも極超巨星ばっかりなんだろうな」 「星が生まれる星域ですから」 「ともかく迂回しろ!」 「了解」  ウォルフ・ライエ星であるVFTS682は、表面の温度が50000度!(太 陽は6000度)、質量は太陽の150倍! 明るさは太陽のなんと300万倍! という、まさにスーパースター。こういう“スーパースター”はふつう、星の集団 の中で生れるものだが、この星はなぜか、まわりに星が無く孤立している。  近くにある星団R136から、なんらかのメカニズムでVFTS682が飛び出 してきたというもの。例えば連星系を成していた片側が超新星爆発を起こして弾き 飛ばされたとかが考えられる。浮遊惑星は数多く存在するが、恒星しかも超重質量 の浮遊恒星は珍しい。 「恒星の重力圏を出ました」 「コース設定、アルファオメガ(αω)散開星団へ」  その星団は、タランチュラ星雲の濃いガスの向こう側、天の川銀河からは見透か すことのできない領域に広がっている。  イオリスの天文家が、当地に来て発見して命名したものである。 「よし、ワープしろ!」 「了解」  αω散開星団近くまでやってきたトゥイガー少佐率いる探索隊。  目の前には、鮮やかな色彩の星間ガスを伴った星々が輝いている。  目的の恒星系に入った時だった、 「前方に感あり! 未確認艦三隻が真っ直ぐこちらに向かって来ます!」  レーダー手のフロランス・ジャッカン少尉が叫ぶ。 「警報鳴らせ! 戦闘配備、探索艇は待機せよ」  艦橋内に緊張が走る。 「モニカ、全周波で交信してみろ」 「了解しました」  通信士のモニカ・ルディーン少尉が相手艦に対して友好信号を打電する。  滅亡都市だったイオリスの先住民の通信記録を解読して、救助信号や友好信号な どの基本を理解できていた。 「相手からの応答ありません」 「攻撃兵器の射撃統制装置らしき反応、ロックオンされました!」  相手は有無を言わさずの攻撃態勢に入っているようだった。 「どうやら、例の好戦国のようだな」 「防空識別圏に入り込んでしまったのでしょうか?」 「そうかもな」 「戦闘配備、完了しました」 「相手からの応答はないか?」 「ありません。交信は届いていると思うのですが、沈黙を貫いています」 「イオリスの先住民とは言語体系が違っていて、通信内容が理解できないという場 合もあります。行動は慎重に」  言語学者のクリスティン・ラザフォードが注意する。 「とは言っても、撃ってくれば話は別だがな」  前回、警告なしで戦闘を仕掛けてきた連中である可能性が大である。 「カニンガム中尉、相手の戦力分析を記録しておいてくれ」  技術主任のジェフリー・カニンガム中尉に指示する。 「了解しました」 「まもなく射程内に入ります」  副官のジェレミー・ジョンソン准尉が促す。 「相手が撃ってくるまでは、こちらからは何もするなよ」 「と言っているそばから撃ってきました」 「やはり話し合う気がまったくないということか……」 「迎撃せよ!」  艦長のマイケル・ヤンセンス大尉の下令と共に、反撃を開始するトゥイガー艦隊。
     
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