第三章
Ⅲ 救援  宇宙空間。  態勢を整えて、砲門を未確認戦に向ける地球艦隊各艦。  対するアムレス号からは無人戦闘機群が発艦している。  アムレス号船橋。  スクリーンを前に腕を組むエダ。  その後方で心配そうな表情のイレーヌ。 「敵ガ応戦シテキマシタ。エネルギービーム接近!」  たちまち集中砲火を浴びるアムレス号。  船橋内はビームの閃光で眩いばかりになっていた。  しかし、船内の機器は正常に作動しており、損傷はないようだった。 「ビームバリアー、正常ニ動作中! 船ニ損傷ハ、アリマセン」 「攻撃続行します。但し、国王の乗られているノーザンプトンは外して」  イレーヌの父親であるクロード王を死なせるわけにはいかない。  敵ではあっても、将来において和平交渉となったときに、生きていてくれなけ ればならない。 「了解シマシタ。ノーザンプトン、ハ外シマス」  引き続き攻撃を続けるアムレス号。  ノーザンプトン艦橋。 「ビ、ビーム砲がまるで歯が立たない」 「バリヤーか!」 「そのようです」 「ミサイルに切り替えて攻撃しろ!」 「バリヤーを張れるとは、よほど高性能のエンジンを搭載しているようです」  スクリーンに映る戦艦の一つが、艦載機によって撃沈された。  次々と沈められてゆく味方艦隊。 「戦艦ミディアムがやられました」 「続いて巡洋艦アマンダ」 「現在の味方の戦況は?」 「はっ。現在味方の五分の一が撃沈もしくは大破。残りもかなりの損傷を受けて います」 「馬鹿な。たった一隻の敵艦に我が艦隊が手も足も出ないというのか?」  ビーグル号艦橋。  アムレス号が、太陽系連合王国艦隊に対して優勢に戦っているのを、驚愕の視 線でモニターを見つめている囚人達。 「たった一隻で、あれだけの艦隊と互角に戦えるとは」 「互角どころか、かなり優勢に戦っていますね。あ、またやられた」 「あれは、巡洋艦アトランタだったな」  ビューロン少尉が呟く。 「地球艦隊はすでに戦力の五分の一を失ったもよう」 「先が見えてきたな」 「どこの所属の船なんでしょうねえ」 「分からんな。ただ言えることは、我々の敵ではないということだ」 「ケンタウリ帝国でも太陽系連合王国でもなさそうです。となると……トラピス ト星系連合王国ですかね」  奮戦する宇宙船を見つめるアレックスに視線が集まる。  ノーザンプトン艦橋。 「我が方の損害は?」 「はっ。戦力の四分の一を失いました」 「そうか。たった一隻の船に、歯が立たないというのか……」 「こちらにも艦載機があれば十分戦えるのですが」 「うむ。第七艦隊のエンタープライズは、今オルファガ宙域でトラピスト軍と戦 っておるしな。空母はすべて戦線に出ておる」 「駆逐艦フレッチャーが撃沈されました」 「陛下、このままでは全滅してしまいます」 「うーむ。あと一息でビーグルをやれたというのに……」 「陛下……」 「分かっておる。撤退すればいいのだろう。インゲル星に降下しろ。そこまでは 追ってはこないだろう」 「了解。全艦、百八十度回頭! インゲル星へ降下せよ」  全艦インゲル星へと降下してゆく。 「イレーヌ……」  アムレス号に捕らわれている王女を気遣う国王だった。  ビーグル号艦橋。 「見ろ! 地球艦隊が退却を始めたぞ」 「ざまあみろ!」 「俺たちは助かったんだ!」  口々に喜びの声を上げている。 「果たして助かったと言えるかどうか……」  アレックスが呟く。 「そのだ。この船は、もはやポンコツ同然だし、修理しようにも技師がいない。 あの宇宙船だって地球艦隊から救ってくれはしたが、真に味方とは言えないし な」 「一体どこの国の宇宙船でしょうか?」 「分からんな。ただ言えるのは、我々の敵ではなさそうだということだけだ。ア レックス殿はご存じないですか?」 「いえ……」 「宇宙船が、こちらへ向かってきます」 「我々をどうしようというのか……」  一同疑心暗鬼になっていた。  ビーグル号に接近する宇宙船アムレス号。  すぐそばに迫ったアムレス号の雄姿に唖然としている一同。 「すげえ!」 「これほどの宇宙船は、ゴーランド艦隊にだって見当たらないぜ」 「宇宙船より入電です」 「映像回線に映せ!」  ビューロン少尉が指示すると、スクリーンにエダが映し出される。  一同が注目する。 「あなたは?」  ビューロン少尉が尋ねる。 「話はこちらに来てからにしましょう。これより救助艇をそちらに向かわします。 ドッキングロックから脱出して下さい」 「分かりました。感謝します」  もはや航行不能に近いビーグル号にいつまでも乗船しているわけにもいかない。 ここは好意に甘えて移乗するしかない。  不審船であることには変わりがないが、ここにいても埒があかない。 「総員。速やかに脱出の用意をしろ。負傷者から先だ! 急げよ、いつ敵が体勢 を整えて攻撃を仕掛けてくるやも知れんからな」  ただ一人、スクリーンを見つめるアレックス。  エダの背後に見知った人物を確認した。 「イレーヌじゃないか……」  イレーヌの方もアレックスに気が付いて、スクリーンに近寄る。  手を胸に当てて、アレックスを見つめている。 「アレックス……生きていたのね……」  涙を流すその肩に手を置いて、エダが宥める。 「さあ、迎えに行きましょう」
     
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