第二十四章 トランター陥落
Z  そのニールセン中将は怒り狂っていた。 「一体これはどうしたことだ! 絶対防衛圏内だぞ。ランドールは何をしていたの だ」 「閣下。敵艦隊はタルシエンからやってきたのではありません。大河をハイパーワー プしてきたのです」 「ハイパーワープだと! そんな馬鹿なことがあるか。燃料はどうしたんだ? ハイ パーワープは燃料を馬鹿食いする。撤退のことを考えれば余分の燃料などあるはずが ないじゃないか。あり得ん!」 「ハンニバルの時のように、現地調達するつもりでは?」 「一個艦隊程度ならともかく、あれだけの数を補給できるほどの補給基地は、あちら 方面にはないぞ。そのまえに絶対防衛艦隊が到着して交戦となる。燃料不足でどうや って戦うというのだ」 「はあ……。まったく理解できません」 「それより出撃準備はまだ完了しないのか?」 「はあ、なにぶん突然のこととて連絡の取れない司令官が多く。かつまた乗組員すら も集合がおぼつかない有様で」 「何のための絶対防衛艦隊なのだ。絶対防衛圏内に敵艦隊を踏み入れさせないための 軍隊じゃないのか?」 「はあ……。これまでは侵略となれば、タルシエンからと決まっていました。ゆえに、 まず第二軍団が迎撃し、万が一突破された際には周辺守備艦隊の第五軍団が動き、そ の時点ではじめて絶対防衛艦隊に待機命令が出されるという三段構えの防衛構想でし た。それがいきなり第二・第五軍団の守備範囲を超えて絶対防衛権内に侵入してきた のです」 「つまり……第二軍団が突破されない限り、防衛艦隊の将兵達は後方でのほほんと遊 びまわっているというわけだな」 「言い方を変えればそうなりますかね」 「こうなったら致し方ない。TV報道でも何でも良い。敵艦隊が侵略していることを 報道して、全将兵にすみやかに艦隊に復帰するように伝えろ」 「そ、そんなことしたら一般市民がパニックに陥ります」 「敵艦隊は目前にまで迫っているのだぞ。侵略されてしまったら、何もかも終わりだ。 遊びまわっている艦隊勤務の将兵達を集めるにはそれしかないじゃないか」  スティール率いる艦隊。  ブースター役の後方戦艦との切り離し作業が続いている。 「作業は、ほぼ八割がた終了したというところです」 「慌てることはない。どうせ同盟軍側も大混乱していてすぐには迎撃に出てこれない だろうさ。絶対防衛艦隊の陣営が整うまでゆっくり待つとしよう。ハイパーワープの 影響で緊張したり眠れなかった者もいるはずだ。今のうちに休ませておくことだ」 「相手の陣営が整うまで待ってやるなんて聞いたことがないですね」 「有象無象の奴らとはいえ数が数だからな、いちいち相手にしていたら燃料弾薬がい くらあっても足りなくなる」 「すべては決戦場で一気に形を付けるというわけですね」 「そう……。すべては決戦場。ベラケルス恒星系がやつらの墓場だ」
     
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