第二十五章 トランター陥落

                  II  ぞろぞろと議場から出てくる参謀達。  スティールのそばに副官が駆け寄ってくる。 「いかがでしたか?」 「予定通りだ。忙しくなるぞ」 「よかったですね。頭の固い連中ばかりだからどうなるかと思いましたがね」 「実行部隊の司令官がことごとく全滅や捕虜になっている。そしてとうとう要塞を奪 取されてしまった。あのランドールに何度も苦渋をなめさせられて、もうこりごりだ という雰囲気が漂っている。例え名案があったとしても二の足を踏んでしまうのも仕 方のないことだろう」 「それで、提督に任せることになったわけですね」 「ともかく、ぐずぐずしているとあのランドールに嗅ぎ付けられて先手を取られてし まう。奴の配下にある情報部は優秀だからな」 「でもランドールがいかに素早く情報を得たとしても、ニールセンが動かないでしょ う。どんな情報も握りつぶしてしまうのではないでしょうか」 「そうかも知れないが、万全を期しておいて損はないだろう。それより二の段の手筈 はどうなっているか?」 「何とか二百隻ほど調達できました。すべて実際の戦闘に耐えられる完動戦艦です」 「二百隻か、取り合えずそれだけあれば何とかなるだろう。後は戦闘員の腕次第だ な」 「しかし調達した先々では首を捻っていましたね。何せ運航システムが旧式化して退 役した戦艦ばかりですから」 「まだまだ使える物を旧式になったといって、次々と最新鋭戦艦に切り替えるのは考 えものだ。旧式にもそれなりの使い道があることを教えてやろうじゃないか」  その日から、共和国同盟への侵攻に向けての、戦艦の改造が開始された。  四隻の戦艦を一組として、同盟に侵攻する任務を与えられた戦艦の後方に、大河を 飛び越えるためのブースター役を担う戦艦が三隻ずつ合体させられていく。  もちろん合体戦艦を収容するドックなどあるはずもないから、宇宙空間に浮遊させ た状態で作業が行われていた。作業用のロボットスーツを使用して、接続アームをそ れぞれの戦艦に取り付けて合体させてゆく。 「いいか。ワープ中にばらばらになったりしないように、しっかりと固定するのだぞ。 我々のこの作業が共和国同盟侵攻の成功の鍵を握っているんだ。一箇所一箇所、気を 抜かずに確実にやるんだ」  監督の指示の元次々と合体戦艦が作り出されていく。  さらに戦艦の内部では、四隻の戦艦を同時にハイバーワープさせるためのエンジン 制御システムのインストールが進められている。  戦艦の改造の状況が眺められる宇宙ステーションの展望室。  スティールと副官がその作業を見つめている。 「これだけの戦艦が集められると、実に壮観ですね」 「残存艦隊の八割が集結しているからな」 「総勢三百二十万隻です。この中から都合八十万隻が同盟に侵攻するというわけです か。これまでにない大攻勢じゃないですか」 「大河を飛び越えて、絶対防衛圏内に直接飛び込むのだ。なにしろ相手は、ニールセ ン率いる五百万隻からなる大艦隊だ。戦闘の経験のない有象無象の連中とはいえ、数 が数だからな油断はできない」 「にしてもあの旧式戦艦を投入すると聞いて、皆びっくりしていましたよ。本当に役 に立つのかとね」 「言わせておくさ。それより明後日に最後の作戦会議を行う。各部隊長を呼び集めて おいてくれ。今回の戦いは司令官の指揮よりも、各艦長の裁量によって勝敗が決定す るからな。各部隊配下の艦長にまで作戦概要が行き渡るように、しっかりと打ち合わ せをしておかないとならない。16:00時に中央大会議室だ」 「判りました」  そんな二人のそばを、数人の兵士が通り過ぎていく。  会話が聞こえてくる。 「おい、おまえら」  伍長の肩章を付けた下士官が兵士を呼び止めた。 「はい、何でしょう」 「授産施設にいくぞ」 「授産施設?」 「おうよ。まもなく出撃だ。いつ戦死してもいいように、自分の子供を残しておかな ければならん。」 「それって、女の人とベッドを一緒にして、その……つまりセックスというんですか ……するんですよね」 「ま、そんなところだ」 「俺、経験ないんですよ」 「わ、私もです」 「気にすんな。みんな最初は初心者さ」 「でも……」 「いいか、これは命令だからな。女性の子作りに協力するのも軍人の仕事のうちなん だぞ」 「はあ……」 「さあ、元気を出せ。そんなことじゃあ、立つのも立たなくなるぞ」  と大笑いし、兵士達の肩を押すようにして、授産施設なる場所へと追い立てていく。
     
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