第二十一章 タルシエン要塞攻防戦
W  敵艦隊旗艦艦橋。 「敵艦隊、ミサイルを発射しました」  フレージャー提督が即座に呼応する。 「迎撃ミサイル発射!」  一斉に放たれる迎撃ミサイル群。 「ミサイルの後方に高熱源体! 大型ミサイルです。それも駆逐艦並みの超大型!」  急速接近するミサイルの後方から大型ミサイルが向ってくる。 「迎撃しろ! 粒子ビーム砲!」  ミサイルでは迎撃できないと判断したフレージャーは、破壊力のある粒子ビーム砲 照射を命じた。超大型ならば当然の処置である。  艦隊から一斉に大型ミサイルに向って照射される粒子ビーム砲。  しかしビームはミサイルの前方で捻じ曲げられてかすりもしなかった。 「歪曲場シールドか!」 「まさか! 歪曲場シールドはまだ実験段階です」 「それを完成させているんだよ。敵は!」  次ぎの瞬間、ミサイルが消えた。 「ミサイルが消えました!」 「なんだと! どういうことだ?」  タルシエン要塞の中央コントロール室側でも驚きの声を上げていた。 「ミサイルが消えました!」 「なんだと!」  その途端、爆発音が轟き激しく揺れた。  立っていた者は、その衝撃で吹き飛ばされるように壁や計器類に衝突し、床に倒れ た。 「どうした。何が起きた?」  倒れていた床からゆっくりと立ち上がりながら尋ねる司令。  しかし、それに明確に答えられるものはいなかった。 「ただ今、調査中です!」 「要塞内で爆発!」 「レクレーション施設です!」 「火災発生! 消火班を急行させます」 「どういうことなのだ」 「おそらく先程消失したと思われたミサイルがワープして来たものと思われます」 「なに! こんな至近距離をワープできるのか」 「間違いありません。ミサイルは守備艦隊の目前でワープして、要塞内に再出現しま した」  二点間を瞬時に移動できるワープエンジンだが、一光年飛べる性能はあるものの、 視認できるほどの至近距離へのワープは不可能とされていた。  物体には慣性というものが働くことは誰でも知っている。動いているものは動き続 けようとするし、止まっているものは止まり続けようとする。前者は機関が静止しよ うとする時の制動距離となって現れるし、後者は静止摩擦という力となっている。  早い話が、ジャンボジェット機で滑走路の端から全速力で飛び立ち、すぐさま滑走 路のもう片端に着陸静止することは不可能ということである。おそらくオーバーラン してしまうだろう
     
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