第十七章 決闘
Ⅱ  双方の転回が終了して向き合った。  一旦停止して、体制を整える両艦。 「戦闘配備せよ」  艦内に警報が鳴り響き、それぞれの配備場所へと急ぐ。 「総員配置に着きました」 「よし! 機関出力最大、全速前進!」  アレックスの下令を復唱するオペレーター。 「機関出力最大!」 「全速前進」  やがて前方視界を映すスクリーンに敵艦のシルバーウィンドが現れる。 「射程まで三十二秒です」 「安全装置解除」  さらに接近する両艦。 「射程内に入りました!」 「撃て!」  戦闘が始まるが、当然相手も撃ってくる。  粒子ビーム砲が炸裂するが、バリアーがそれを防ぐが、僅かにビームが貫通して艦 に損傷を与えた。 「損傷軽微です。戦闘には支障はありません」  ダメコン班から連絡が入る。 「防壁が弱いな……。原子レーザー砲への回路を遮断して、バリアーに回せ!」 「原子レーザー砲を使用しないのですか?」 「使用しない。防御を優先する」  サラマンダー型の主砲である原子レーザー砲は、今回のような接近戦には使用不能 である。あくまで艦隊戦のように向かい合って撃ち合うためのものだ。  使えないものに貴重な電力やエネルギーを消耗させるのは無駄だ。 「まもなくすれ違いに入ります」 「面舵衝突回避。左舷に攻撃がくるぞ。左舷砲塔は防御態勢を取りつつ攻撃開始!」  側面攻撃が始まる。  シルバーウィンド側でも、側面攻撃に対処していた。 「側面攻撃きます!」 「衝撃に備えよ。反撃開始!」  そもそもが通常の宇宙戦艦は、舷側は攻撃力も防御力も高くない。  戦列艦ヴィル・デ・パリスのように側面攻撃に特化した戦艦でなければだが。  艦内のあちらこちらで火の手が上がる。 「火災発生! 消火班を急行させます」 「さすがランドール戦法というところだな。近接戦闘には一日の長ありだ」 「原子レーザー砲を撃ってこないので助かってます」 「この戦闘では使えないからな」 「まもなくすれ違いを終えます」 「ダメコン班は今のうちにダメージ箇所を復旧させよ」  すれ違いを終えて離れてゆく両艦。 「第一次攻撃終了。引き続き第二次攻撃態勢に移る。コースターンだ」  双方Uターンして、第二次攻撃に入る。 「今度は右舷で戦う! 取り舵で回り込め」  相手側も呼応して右舷での戦いになる。 「撃て!」  両艦の間に炸裂するエネルギー、激しい撃ち合いが続く。  その一発がサラマンダー後部エンジンに直撃し、激しい火炎を噴き出す。 「メインエンジンに被弾! 機動レベル七十パーセントダウン!」 「速力が半減します」 「補助エンジンを始動!」  メインエンジンをやられて、艦橋要員も気が気ではない。  しかし、アレックスは冷静に次の指令を下す。 「円盤部を切り離して、私は戦闘艦橋へ移動する」 「自分も艦長として艦の指揮を執ります!」 「いいだろう。着いてこい」  艦長席を離れてアレックスに従うスザンナ。 「円盤部の指揮は、ハワード・フリーマン少佐に任せる」 「了解! 円盤部の指揮を執ります」  艦橋の後方にある転送装置に向かうアレックスとスザンナ。 「パトリシアは、ここで勝利祈願していてくれ」  この戦いに作戦参謀は必要がない。  無駄な犠牲とならないように置いておくことにするのだった。  転送装置は、円盤部にある第一艦橋から前方の戦闘艦橋へと転送するものだ。 「円盤部切り離し準備!」  円盤部を任されたフリードマン少佐が指揮を取り始めた。  転送装置によって、戦闘艦橋へと送られた二人。  アレックスは指揮官席に、スザンナは艦長席にと着席する。  戦闘艦橋には通信統制管制室もなければ、艦隊を動かす戦術コンピューターも接続 されていない。  すべてはオペレーター達の力量にかかっている。 「こちら第一艦橋。フリードマン少佐。切り離し準備しました! これより分離作業 に入ります」  着々と切り離し作業が進む。  ゆっくりと次第に切り離される前方部と後円部。  いわば前方後円墳から前方部だけで行動するのだ。 「切り離し完了」 「分かった。こちらはUターンする」  慣性で進む円盤部から離れて、敵艦へと向かう前方部。 「これより円盤部は惰性にまかせて後方に下がります」 「よろしく頼む」  後方へと下がってゆく円盤部。  それを見届けて、 「機関全速前進!」  スピードを上げた。
     
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