第十一章 帝国反乱
Ⅸ  Pー300VXからの報告を受けて、首都星サンジェルマンから遠く離れた場所 で待機していた部隊が動いた。  艦体に赤い火の精霊が描かれた高速巡航艦「ヘルハウンド」に従えられた、本家 本元のサラマンダー部隊十二隻である。。  指揮官トーマス・マイズナー少佐が頷く。 「提督の危惧した通りに、敵さんが動いたな」 「さすがですね。先見の明には感服します」  副長のクランシス・サックス少尉が感心する。 「提督自身も誘拐された経験があるからな」 「もしかしたら、今回の誘拐犯もその時の奴では?」 「かも知れない」 「直ちに救出作戦に入ります』?」 「いや待て! 奴らがどこへ向かうかを見定めなくてはならない。アルデラーンに 向かうか……」 「中立地帯の海賊基地に向かうかですね」 「そうだ。もし海賊基地に向かうならば、摂政派と海賊、というかバーナード星系 連邦との繋がりも判明する」 「そういえば、海賊基地はまだ判明していないんですよね」 「ああ、中立地帯側にある惑星ミストと補給基地から通信傍受して、場所を割り出 そうとしているのだが、あれから探知できるような通信記録はないそうだ」 「もしかしたら移動基地のようになっているのかも知れないのでは?」 「可能性はあるが……。ともかく跡をつけていけば、何らかの事実が判明するだろう」 「ですね」 「よおし! 尾行していることを悟られないように、微速前進で追跡する」 「了解! 微速前進」  先行するPー300VXに案内されるように、私掠船の尾行を始めた。  私掠船内にある一室。  少女がベッドの縁に座り、虚ろな表情で天井を見つめている。  拉致監禁され、どうしようもない状態を悲観している。  少女の力では成す術もなかった。  唯一の救いは、拘束されていないことだけだった。 「侯女はどうしておるか?」 「おとなしくしておりますよ。浚った当初は抵抗していましたが、宇宙に出た今は 逆らっても無駄だと悟ったようです」 「大切な人質だ。一応大切に扱わなくてはな」 「一応ですか」  とほくそ笑む副長。 「よし。進路を中立地帯へ向けろ!」 「久しぶりに基地に戻るのですね」  ゆっくりと方向を変えて、中立地帯へと転進した。  ヘルハウンド艦橋。 「やっこさんが、中立地帯に向かうようです」 「跡をつけられているのに気づかないか。案内してもらおうか、海賊基地まで」 「さすが、Pー300VX偵察機ですね」 「ああ、戦艦百二十隻分の予算が掛かっているからな」 「それもこれも、ランドール提督の采配というところでしょうか?」 「まあな。俺だって、戦艦百二十隻の方を選んださ」 「問題は、偵察機の燃料ですね。エネルギー切れで正体を明かしてしまわなければ いいのですが……遮蔽装置って結構エネルギーを消耗するのでしょう?」 「やつらが真っすぐ基地へ向かってくれる分には、十分燃料は持つはずだ」 「寄り道しないことを祈りましょう」
     
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