第二章 ミスト艦隊
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ミスト艦隊旗艦の艦橋。
司令官が迫りくる敵艦隊を迎撃するための指示を次々と出していた。
「敵艦隊の進撃予想ルートを出せ!」
スクリーンにデュプロス星系の星図と敵艦隊の位置が示されていた。
敵艦隊からまっすぐ延びる予想ルート。
「何だこれは? 奴らはまっすぐ進んでいるのか?」
「はい。一直線に向かってきます」
それを聞いてアレックスが呟く。
「愚かなことだ。自滅するつもりかな……」
それを聞きつけた司令官が、一瞬怪訝そうな表情を浮かべる。
「敵艦隊の勢力は?」
「戦艦四百五十隻、巡航艦三百二十隻、その他合わせて総勢千隻に及びます」
「対する我々は、せいぜい三百隻程度……。まともに戦っては勝負にならないな」
勝勢は敵艦隊にあるのは明白な事実となっていた。
「司令……。本当にお戦いになられるのですか?」
副官が心配そうに質問する。
「当たり前だ。事前の外交交渉もなく、予告なしにデュプロスに侵入してきた艦隊が、
親善使節であるはずがないだろう」
「それはそうですが……」
副長は和議の道を考えているようだった。
しかし圧倒的に有利な側である敵軍が承諾するはずもなかった。
ここに至っては、たとえ全滅しても戦うより道はなかった。
「提督。折り入ってお願いがあります」
「お願い?」
「提督にこのミスト艦隊の指揮を執っていただきたいのです」
「わたしが指揮を?」
これまでにも数倍の勝る敵艦隊と戦い勝利してきたアレックスとはいえ、自身が育て
鍛えてきた艦隊ではない。手となり足となって忠実に指令を遂行できるかは未知数であ
った。突拍子で理不全な命令が下されても、素直に従ってくれるかも判らない。
「本当に、わたしが指揮を執ってよろしいのですか?」
再度確認を求めたのは、そんな疑心暗鬼からくるものであった。
すると艦橋にいたオペレーター達が全員立ち上がった。
「提督! 指揮を執ってください」
「お願いします」
次々と賛同の意を現していた。
「そういうわけです。ミスト艦隊の将兵全員が提督の指揮を願っています」
「はあ……。そうですか」
髪の毛を掻くようにして、悩んでいるようであったが、
「判りました。指揮を執りましょう」
いたしかなく承諾するアレックスであった。
とにもかくにも迫り来る敵艦隊をどうにかしなければ、自分の旗艦艦隊も銀河帝国へ
向かうことができないのも脳裏にあった。