第九章・犯人を探せ

                 VII  司令官室。  その司令官は、コレットとほぼ同年齢であった。  戦術用兵士官は、士官学校では一般士官の教義の後に、さらに三年ほどの専攻科目 がある。三年先に学校を卒業して軍務についていたコレットの方が軍歴は長いから、 通常の軍務にあれば、階級はコレットの方が上のはずだった。  しかし目の前にいる人物は、一年も経たない間に目覚ましい戦績を上げて中佐にま で昇進していた。  同盟軍には珍しく深緑色の瞳と褐色の髪が畏敬を誘う。  その姿は威風堂々として、まったく隙がなかった。今この瞬間、腰のブラスターを 引き抜いて突きつけても、その動作よりも早く机の引き出しから、銃を取り出して反 撃してくるだろう。そこに銃があればだが……。  というよりも、目の前の人物が敵意を持っているかどうかを、瞬時に判断できる眼 識を持っているように感じた。そう思う感覚は、これまでの彼の戦歴が物語ってくれ るだろう。  両手の指を互い違いに組んで机の上に置き、もの静かに微笑んでいる。  それが、独立遊撃艦隊司令官、アレックス・ランドール中佐。その人であった。  そのデスクの側に、副官のパトリシア・ウィンザー中尉が立っている。  中佐は艦隊の最高責任者ではあるが、コレットの属する情報部特務捜査科は、その 権限の及ばない部課であった。いわば行政と司法の分権にあたる。 「コレット・サブリナ中尉であります。この度のアスレチックジムにおける事故捜査 を担当することになりました」 「ああ、ウィング大尉から聞いているよ。早速いろいろと捜査をはじめているようだ ね。それで、事故か殺人かわかったかね」 「まだ、はじめたばかりですから……。結論を出すには、まだ早急すぎます」 「そうか……。ここに検屍報告書のコピーが届いている。渡しておこう。必要なこと があれば何でもいいたまえ、出来る範囲で協力しよう」 「ありがとうございます。つきましては犯罪捜査特務権にあります、乗員名簿の閲覧 と居住区の自由通行の許可をお願いします」  と言って、コレットは検屍報告書を受け取り、自分のIDカードを差し出した。 「ああ、わかっている」  アレックスは端末に自分のIDカードを差し込んで閲覧コードを開いてから、別の カード挿入口にコレットのIDカードを差し込んで、閲覧コードをコピーし、さらに 通行許可を与える暗号コードを入力して、IDカードを返した。それによってコレッ トのIDカードで乗員名簿の閲覧と通行許可が可能になるのである。  なお端末に二つのIDカード挿入口があるのは、今のようなコピー用の他、特殊な コード発令の際に必要になっているからだ。例えば艦を自爆させる命令である自爆 コード発令には必ず二つのIDが必要である。 「よし、コピー終了した。これで、当艦に搭乗している隊員全員の閲覧が可能だ。そ れと艦長レベルで、居住ブロックにあるすべての施設に入場できるし、艦橋への通信 連絡も可能だ」 「おそれいります」