陰陽退魔士・逢坂蘭子/第二章 夢幻の心臓

其の拾 「終わりましたか?」  刑事課長が言葉を掛ける。 「はい。これで変死事件も起きません」  若い刑事が部屋に入って、二人の遺体を調べ始めた。 「これはどういうことですか? 灰になってしまうなんて」 「お母さんは、お嬢さんを生かし続けるために、自分の生命エネルギーを注ぎ込んでいた のです。身も心もすり潰して」 「そんなことができるのでしょうか? いや……現実に目の前で起こったのですから信じ るしかないのでしょうねえ」  刑事課長が感慨深げにため息をつく。 「娘と妻は、成仏したのでしょうか?」  主人が尋ねた。 「はい。二人の魂が仲良く手を取り合って、天に昇っていくのが見えました」 「魂が見えるのですか?」 「場合によります。自分が関わった人とか、怨念やこの世に未練を残した人に限りますけ ど」  屋敷から出てくる蘭子と刑事二人。  大きな欠伸をして、背伸びをする蘭子。 「どうしました?」 「いえね。昨晩、ある所に遅くまで監禁状態にされていたので、睡眠不足気味で」  わざとらしく聞こえるように蘭子が言うと、 「いや、大変失礼なことをした。すまないと思っている」  頭を深々と下げて、反省している様子を見せる刑事課長。 「あなたは霊能力者のようだ。それでお願いというか協力して頂きたいのですが……」 「協力?」 「いえね。ここ最近、うちの管内で人の手では不可能と言われるような事件が多発してい るのです。ついこの間も四天王寺で全身の血を抜き取られるという事件が起きていたので す」  その事件は、蘭子が隠密裏に解決したものだった。 「結局、まったく不可解で手掛かりなしで、迷宮入りになりそうです。あなたには、そう 言った「人にあらざる者」に関わる事件捜査に協力してほしいのです」 「なるほど……。そういうことなら、自分にできうる限りの協力に尽力しましょう」 「ありがたい。また改めてご自宅にお伺いしてご相談しましょう」 「では、今日のところはこれで失礼させていただきます」  刑事と別れて帰宅の途につく蘭子。  また一つの事件を解決して、充実した気概に満ちていた。 夢幻の心臓 了
   
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