続・冗談ドラゴンクエスト 冒険の書・12

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女勇者 勇者「ここが、俺のひいばば(曾祖母)の家だよ」 ナレ「アリアヘンの南西の隅に、その家はあった。こじんまりとした二階建て」 ナタリー「あら、意外と質素な家ね。大魔王ズーマを倒した英雄だから、国王から褒美を貰っ て御殿にでも住んでるかと思ったわ」 勇者「確かに国王から褒美は貰ったみたいだけどね。新たに神竜討伐隊を結成したり、訓 練費用や武器防具費とやらに金掛けて、いつも金欠だったらしいよ」 ナタリー「神竜討伐?」 勇者「何でも竜王の女王神殿の奥深くに神竜が住んでいて、制限ターン以内に倒せば願い を叶えて貰えるそうだよ。それで『ちちオルテカを いきかえしたい』ってな」 リリア 「いきかえしたい……って文章おかしくないですか?普通、いきかえらせたいでは?」 勇者「そういうゲーム設定になってたらしいよ。一行に表示できる文字数制限だとか。例 え1文字多くても表現できないんだ」 ナレ「ゲーム設定なんて言わないでください(*'へ'*)ぷんぷん」 勇者「ともかく中に入ろうぜ」 ナレ「と、勇者が一歩家の中に足を踏み入れた途端」 声 「あんしゃ、なんばしちょったかえ!かんどうさいったげんしょよ!!」 ナレ「大声が響き渡ったかと思うと、ドバーン!!と勇者が吹っ飛んで出て、すぐ近くの 木にぶち当たった。そしてドアを勢いよく閉められた」 リリア 「よく飛びましたね。今の声は、お母さまでしょうか?」 ナタリー「さすが、勇者の血筋だけあるわね。怪力無双じゃないの」 コンラト「しかし、どこの地方の方言なのでしょうね。なんとなくは理解できますが」 勇者「ちっ!誰も俺の身体の心配しないんだな」 ナタリー「あんたは、殺しても死なないでしょ」 リリア 「ともかく依頼を達成するには、お母さまを説得するしかないですね」 ナタリー「当たって砕けろよ。(インターホンを押す)ピンポーン」 声 「どちら様でしょうか?」 ナタリー「ギルドの依頼を受けて来たものですが」 声 「はい。今開けます」 ナレ「ドアが開いて、声の主が現れた」 母親「ギルドの依頼ですね?」 ナタリー「はい、そうです」 ナレ「パーティーの面々を確認してから」 母親「ところで、そこのロクデナシもパーティーの仲間?」 リリア 「はい、そうです」 ナレ「勇者を睨みつける母親。顔を逸らせる勇者」 母親「……まあ、いいわ。お入りください。どうぞ」 コンラト「標準語……(呟く)」 母親「あら、聞こえましたか?」 コンラト「ええ、大きな声でしたから」 母親「興奮すると、つい出ちゃうんですよ、方言('ω'*)アハ♪」 ナレ「リビング兼台所(LDK)に案内される一行」 母親「まあ、お座りください。お茶でも出しますわ」 ナレ「お茶を頂きながら、依頼の内容を確認する」 母親「依頼は、我が家の家宝である『光の鎧』をドラドーラの村にいる『ゆきのん』とい う方に届けて頂きたいのです」 勇者「光の鎧!!」 ナレ「ビックリといった表情の一同」 コンラト「それは、大魔王ズーマを倒した女勇者さまが持っておられたものでは?」 母親「そうです。祖母が天のお告げを聞いたとかで、私の手で運べれば良いのですが、何 かと所用も多いので、ギルドに依頼したのです」 リリア 「その鎧を見せて頂けますか?」 母親「分かりました。祖母の部屋に置いてあります。祖母にも会っていただけますか?」 コンラト「参りましょう」 勇者「俺はここで待ってるよ」 母親「いんからきんしゃい!」 ナレ「勇者の耳を引っ張って、祖母の部屋へと連れてゆく」 コンラト「ナタリーさんと同じことやってますね」 ナタリー「聞かん坊に言うことを聞かせるには一番なのよ」 ナレ「大魔王ズーマを倒した女勇者の部屋に入る。年を数えること130歳のギネスブッ ク並みのご高齢である」 祖母「ご飯の時間かのお」 母親「さっき食べたばかりでしょ」 勇者「認知症が進んだな。なんせ130歳だかんな」 祖母「ゆ、勇者かい?」 ナレ「祖母が勇者に気が付いた。ゆっくりと手を差し伸べる」 母親「手を握ってやんよ」 勇者「へいへい。(その手を握る)」 ナレ「その時、曾祖母の思念が勇者の意識に流れ込んできた」 祖母「待っておったぞ。来ると思っておった」 勇者「そうか……」 祖母「おまえが、ギルドの依頼うけたんじゃな」 勇者「そうだよ」 祖母「なら、心配することはないな。おまえは、オルテカ家の血筋じゃからな」 勇者「…………!!」 ナレ「無言の意思疎通が行われていた。他の人々には、二人の間の会話を知る由もない」 母親「かいつまんで言いますと。祖母の夢枕に亡き父親のオルテカが現れて、光の鎧をド ラドーラの武器屋に渡してくれと頼まれたそうです」 勇者「オルテカというと、神竜を倒して『ちちオルテカを いきかえしたい』という願い を叶えてもらった、あのオルテカかよ」 リリア 「勇者さんの高祖父ですね」 コンラト「オルテカ様と言いましたけど、実際は精霊ルビス様じゃないでしょうか。私たち は、これまでにも天のお告げにまつわる依頼を受けてきました」 母親「そうかも知れませんね。高齢だし、身近な人物の声だと思ったのでしょう」 祖母「ゆ、勇者……。後の事……た、のんだよ」 ナレ「というと、静かに目を閉じた。波乱万丈の人生を送った女勇者の大往生であった」 医師「ご臨終です」 ナレ「一同目を閉じて、女勇者の冥福を祈るのだった」
     
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