銀河戦記/機動戦艦ミネルバ 第四章 新型モビルスーツを奪還せよ XI
2019.07.28


 機動戦艦ミネルバ/第四章 新型モビルスーツを奪回せよ


                 XI

 見合わせる三人。
 突然、大声を出して笑い転げる。
「何がおかしい」
「何がおかしいって……。ハイネだぜ、ハイネ」
「その筋骨隆々の身体で、ハイネはないだろう」
「俺は、シュワルチェネッガーかと思ったぜ」
「そうそう、女の子みたいな名前は似合わないわよ」
 怒り出すハイネ。
「俺のオヤジが付けた名前だ。しようがないだろ」
「しかしよお……」
 とまた笑い出すジャン。
 再び計器が鳴り出した。
「ほら、呼び出しよ」
「わかっている」
 無線機を操作すると、別のポップアップが画面が開いて、あの隊長が映し出された。
背後に複雑な計器類が並んでいるところから、モビルスーツのコクピットにいるらしい。
「おまえら、何をしている!」
「実は、例の二人組みのガキがモビルスーツに……」
 ハイネが弁解する。
「あらら、隊長さん、モビルスーツを運転できるの?」
「当然だ。残しておくのももったいないので、拝借することにした」
「いつの間に……」
 つい先ほどまで、ジープから機関銃を掃射していたはずである。臨機応変に行動する
実行力のある人物のようである。
「とにかく議論をしている暇はない。港まで突っ走れ! ミネルバが回収してくれる」
「了解」
 新型が二台と旧式が二台。
 機銃を装備している旧式が一斉掃射しながら突破口を開いていく。その後を新型が追
従する。
 しかしながら、アイクとジャンの機体は、「よっこらせ」という状態で、思うように
動かせないでいた。
「もう、何やっているのよ。どんどん引き離されていくじゃない」
「しようがねえだろ。新型だから、駆動系がまるで違うんだから」
「加速装置とかないの?」
「もう、じれったいわね」
 というと、手を伸ばして機器を手当たり次第に、押しまくった。
「ば、馬鹿。何をする!」
 突然、椅子に押しかけられるような加速を感じる一行。
「なんだ? どうしたんだ」
「知るかよ」
 サリーがスクリーンを指差しながら、
「見て、見て。これ、空を飛んでるんじゃない?」
 と叫んでいる。
「う、嘘だろ?」
 事実のようであった。
「こいつ、飛行タイプだったのか……」
「どこまで行くのよ」
「知るかよ。こいつに聞いてくれ」
 どんどん加速して上昇していく機体。
 操縦方法などまるで知らないのでなすがままだった。
 地上に残された隊長たち。
 呆然と見送っている。
 やがて雲の彼方へと消え去ってしまう。


ちなみに「ハイネ」という名は、ドイツで不通に男子の名前として使われている。
アニメ、「王室教師ハイネ」がありますね


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銀河戦記/鳴動編 第二部 第三章 第三皇女 XII
2019.07.27


第三章 第三皇女


                 XII

 それはアレックスが昇進し大艦隊を指揮統制できるようになっても独立遊撃艦隊とし
て、二百隻をそのまま自分の直属として配下に置き続けたきたからである。
 幾度となく死線を乗り越えてきた勇者の余裕ともいうべき雰囲気に満ちていた。
「P-300VXより入電! 敵空母より艦載機が発進しました。その数およそ三万
機」
 オペレーターの声によって、艦橋は一気に緊迫ムードに包まれた。
「おいでなすったぞ。全艦、対艦ミサイル迎撃準備。CIWS(近接防御武器システ
ム)を自動追尾セット。各砲台は射手の判断において各個撃破に専念せよ」
 戦闘機は接近戦に入る前に、遠距離からのミサイル攻撃を仕掛けるのが常套である。
そこでまず最初に、そのミサイルに対する防御処置を取ったのである。とはいえ、各機
がミサイルを一発ずつ放ったとしても、総数三万発のものが襲い掛かってくることにな
る。まともに相手などしていられない。
「ミサイル接近中!」
「全艦急速ターン用意」
 ここはミサイルの欠点を突くしかない。宇宙空間では、ミサイルは急速ターンができ
ず、ホーミングによって追尾しようとしても旋回半径が非常に大きい。そこでタイミン
グよく急速移動すれば、何とか交わすことが可能である。
「よし、今だ! 急速ターン!」
 ミサイルと違って、ヘルハウンド以下の艦艇には、舷側や甲板・艦底などに噴射ジェ
ットが備えられており、急速ターンや平行移動ができる。ミサイルを目前にまで近づけ
ておいて、一気に移動を掛けるのである。
 目標を失ったミサイルは頭上を素通りしていった。そこをCIWSが一斉に掃射され
て破壊してゆくのである。
 こうしてミサイル群を見事に交わしきってしまったサラマンダー艦隊は、さらに前進
を続ける。
「敵艦載機、急速接近!」
 ミサイルよりはるかに手ごわい相手の登場である。
「提督。ちょっと遊んでもいいですか?」
 操舵手が許可を求めてきた。
 余裕綽々の表情である。
 三万隻を相手にして遊んでやろうという自信のほどが窺える。
「ほどほどにしてくれよ」
「判ってますよ」
 わざとらしく腕まくりをして、操作盤に向き直った。
「全艦に伝達。戦闘機のコクピットは狙わずに、後部エンジンに限定して攻撃せよ。パ
イロットが緊急脱出できるようにしておけ」
 今回の作戦は、敵艦隊を殲滅させることではなく、空母アークロイヤルに座乗してい
るマーガレット皇女を保護し、反乱を終結させ和平に結びつけることにある。その他の
将兵達には極力手出ししないようにしたかったのである。
 仮に目的のためには手段を選ばずで、手当たり次第に殺戮を行えば、後々まで遺恨を
残して、和平にはほど遠くなってしまうだろう。
 とにもかくにも、サラマンダー艦隊と戦闘機との壮絶な戦いが繰り広げられていた。
 ランドール戦法、すなわち究極の艦隊ドッグファイトを見せつけられて、目を丸くし
ている戦闘機パイロット達がいた。
 何せ機動力では、はるかに戦闘機の動きを凌駕していたのである。
 舷側などにある噴射ジェットを駆使して、まるで曲芸飛行を見せつけてられているよ
うだった。その場旋回やドリフト旋回など、戦闘機には不可能な動きで、簡単に背後に
回ってロックオン・攻撃。もちろんCIWSなどの対空砲火も半端なものではなかった。
次々と撃墜されてゆく戦闘機編隊。戦闘開始十分後には一万機が撃ち落されていた。
 パイロット達は、すっかり戦闘意欲を喪失しまっていたのである。


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妖奇退魔夜行/胞衣壺(えなつぼ)の怪 其の拾弐
2019.07.26


陰陽退魔士・逢坂蘭子/胞衣壺(えなつぼ)の怪


其の拾弐 大阪大空襲


 1945年(昭和20)3月13日23時57分から14日3時25分の大阪大空襲。
 米軍の焼夷弾投下標的は、北区扇町・西区阿波座・港区岡本町・浪速区塩草に設定さ
れていた。
 グアムを飛び立った第314航空隊の43機が夜間に飛来し、大型の焼夷弾(ナパーム)
を高度2000メートルの低空から、港区市岡に対して爆撃を開始した。
 木と紙でできた日本家屋を徹底的に燃やし尽くすために開発された、民間大虐殺用の
ナパーム弾による大空襲の始まりである。
 続いて、テニアンから、第313航空団のB29 107機が浪速区塩草を爆撃。
 さらに、サイパンから第73航空団の124機が、北区扇町・西区阿波座を爆撃。

 こうして一晩で大阪中心部はほぼ壊滅状態の焼け野原となった。
 阿倍野区は、照準点から少し離れてはいたが、大火災による延焼は避けられなかった。
 至る所で火の手が上がり、木造家屋を燃やし尽くしていった。
 それでも、奇跡的に延焼被害を免れた家屋も所々に散見された。
 そんな家屋の一つ、江戸時代から続く旧家があった。
 母屋を囲うようにして高い土塀があったために延焼を免れたようである。
 その玄関先に一人の男が立ち寄った。
 シベリア抑留から解放され帰国した元日本軍兵士で、久しぶりの我が家の玄関前に立
ったのだ。

 シベリア抑留者は、厳寒の中での重労働を強制される他、ソ連共産党による徹底的な
「赤化教育」が施された。
「天皇制打破」「生産を上げよ」「スターリンに感謝せよ」などのスローガンを叩きこ
まれてゆく。いち早く順応し優秀と見なされた者は待遇もよくなり、従わない日本兵へ
の「つるし上げ」が横行した。日本人が日本人を叫弾するという悪習がはびこっていた
のである。する方もされる方も次第に精神を病んでいった。
 長期抑留から解放されて日本への帰国がかなっても、祖国は焼野原となり多くの者が
家を失っていた。
 安堵して故郷の土を踏んだ矢先、入港した途端に警察に連行され「アカ(共産主義)」
というレッテルを張られて独房に入れられて執拗な尋問を受ける者も多かった。やっと
解放されても、どこへ行っても警察の監視が付いて回った。
 その男もそのような待遇に合わされた一人であった。


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